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AI通信「こんなとこにも人工知能」

Matej Kastelic / shutterstock.com

2020年に入り、人工知能(AI)ベースのサービスを展開するベンチャー起業家と話す機会が一気に増えた感がある。

数年前まで、AIは限られた研究所や大企業でのみ研究・開発され、ユースケースが確立されてきた。それが昨今では、さまざまな産業に特化したAIサービスが、ベンチャー企業によって次々とリリースされている。ユーザー視点でみれば、中小企業のみならず、個人レベルでも利用できるよう敷居がグッと下がってきた。

「AI人材」より足りないもの


ところで、起業家たちとの話でよくでてくる話題がある。それは、「企業が人工知能をビジネスに実装するためには、何がネックになっているか」というものだ。消費財系に特化したAIサービスを提供する起業家O氏は言う。

「サービスを導入する折、複数の企業にヒアリングを行ったり、協業して気づいたことがあります。それは、AIにいくら詳しくても、現場を知らなければ実装ができない。逆もまたしかりで、現場の経験や知識がいくら豊富であっても、AIについて知らないと使いこなすことができないということです。多くの企業が悩んでいる問題で、AIとドメイン知識(ある専門分野に特化した分野の知識)をブリッジする『第三の能力』が強く求められています」

これまで世界のメディアでは、「AI人材不足」が盛んに報じられてきた。AIに特化したエキスパートが足りず、世界中で獲得競争が激化しているというものだ。一方、最近ではAIにはドメイン知識が重要になってくるという指摘も増えてきた。それは事実、そうなのかもしれない。

社内調整もカギに


この「第三の能力」を職種として表現するならば、「AIディレクター」と言ったところだろうか。O氏によれば、現場とAIを繋ぐためには、とにかくアイデアやセンスが重要だそうで、そのパートを担える人材が圧倒的に不足しているという。なおAIディレクターには、「調整力」や「権限」も非常に重要になってくる。他のAI起業家D氏は指摘する。

「企業がAIを上手く実装できない理由のひとつに、社内組織の縦割り構造がある。例えば、AとBという主力商品があったとしよう。開発、流通、マーケティングなどの各データをAから取るのか、Bから取るのか、もしくは両方から取るのか、取る際には組織内のどのチームがその作業を担当するのかなど、決まり事をいくつも整理する必要がある。場合によっては、社内の各チームの意見や利害が割れる場合もある。実際、大企業にAI担当として赴任した専門家の中には、社内の利害調整にやりづらさを感じている人も多いと聞く」

企業が大きくなればなるほど、AIによる全体最適化の大きな構想を企画し、着実に計画・実行できるようにするには、その調整役が必須となる。

加えて、データ集めのディレクションも重要だ。各産業の大手企業はデータをたくさん抱えているように思われがちだが、実際には「AI学習に使えるように整理されていない」ことがしばしばだそうだ。どんなデータをどのように集めるか。各企業の目的を実現するために、企画からデータ集めの方法、また実装までをディレクションできるAIディレクターの存在が強く求められ始めている。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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