ライフスタイル

2020.03.18 11:00

先端技術より「ローテク」が効く。SARS封じ込めに学ぶコロナ対策

Getty Images


SARSと新型コロナとの違いは?


新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の遺伝子配列はSARSのそれと79%一致する。つまり似た部分もあれば、異なる部分もあるということだ。少し整理したい。
advertisement

・SARSでは1人で10人以上に感染させるスーパースプレッダーが存在したが、新型コロナでは1人で数人に感染させるスプレッダーが主流。

・SARSはスーパースプレッダーを除けば75%の患者は誰にも感染させていない。新型コロナも80%は感染させていない。

・SARSの感染の場は病院か高齢者施設であった。新型コロナでは、高齢者施設や院内感染もあり得るが、ライブハウスや屋形船のような市中の密閉空間が主流。
advertisement

・SARS は発症してから4〜5日経って感染力を増す。よって、発症後3日以内に個室に隔離すれば感染の連鎖を断ち切ることができた。しかし、新型コロナでは症状のある患者からだけではなく、無症状感染者、同じく潜伏期間中の無症状人、あるいは風邪程度の軽い症状の人(不顕性感染者)が感染させ得るからやっかいだ。そのため、イベントの自粛など、人と人との接触頻度を減らす、いわゆる”Social distancing(社会的距離の確保)”が重要になってくる。
(social distancingについての記事はこちら)

感染のリスクは「空気」「距離」「会話」「人数」「時間」で決まる。


クラスター(集団感染)が発生してからでは遅い。何故なら発症から診断までに1~2週間かかることが多く、クラスターが発生したと気づいたときには、個々の患者が次のクラスターを形成しはじめているからだ。

それでは、どうしたらクラスター発生をブロックできるのだろうか。今まで二次感染でクラスターを起こしている場所がどのような状況だったか思い出して欲しい。

長距離バス、観光としてのタクシー利用、クルーズ船、屋形船、会議、展示会、ジム、ホットヨガ、ライブハウス、卓球、展示商談会、懇親会、個人宅、病院、高齢者施設などである。海外では教会などの宗教施設で感染が拡大した可能性もある。まだ、これからも感染リスクの高い場所が明らかになるかもしれない。

私の知る限り換気の良い屋外でクラスターは発生していない。札幌雪まつりで問題視されている密閉されたテントは屋外ともとれるが、空気が通り抜けにくいため、2方向窓を開けて風通しできる室内よりも状況は悪い。

感染場所の共通点は、換気が悪い空気が澱んだ状態で複数人と、面と向かって会話をするなどして過ごすことである。換気が悪ければ、ウイルスが長時間エアロゾルとして空中に浮遊して留まる。

一方、換気がよい室内、もしくは外であれば、エアロゾル中のウイルスは速やかに消え去る。人数が多くなればなるほど、その中にキャリアと呼ばれる無症状感染者、あるいは潜伏期間中の感染者がいる可能性が高まる。

クルーズ船のように長期間滞在すれば、当然感染確率は上がる。病院や高齢者施設はクルーズ船と似た要素をもつ。

すなわち「空気(換気)」「距離」「会話」「人数」「時間」の5つの要素の積(掛け算)で二次感染の可能性が増減する。掛け算なのでどれか1つの要素をゼロにできれば二次感染もほぼなくなり、感染拡大は止まる。
次ページ > 社会活動を維持しながら感染を止めるには

文=浦島充佳

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事