休校は本当に有効?新型コロナ対策を最新症例データから分析

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日本政府は、全国の小学校・中学校・高校を3月2日から休校にするよう要請した。北海道では知事が「緊急事態宣言」を出し、道民に外出を控えるよう呼びかけている。

官民合わせてさまざまな対策が取られ、なかには「過剰反応だ」といった声も聞こえてくる。有効なワクチンや薬がいまだ見つからないなか、どうすればこの新型コロナウイルス感染症の感染拡大をゆるやかにできるのだろうか。これまでの中国における対応と日本における対応を比較しながら、疫学的に分析する意義は大きい。

日本でダイヤモンド・プリンセス乗客の疫学データが、中国では中国国内72,314人分の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疫学データが相次いで発表された。これらの現時点で解析可能なデータをもとに、大流行のニュースの裏で実際に何が起きていたのかを分析し、学校休校の是非を考える。

中国と日本、感染者の隔離の現状


まず、過去の新型コロナウイルス感染症の1つであるSARSと比較することで、今回のウイルスの特徴を見ていく。SARSの場合は発症4~5日後から感染力が出てくる特徴があった。そのため、発症後3日以内に入院隔離することにより実際に封じ込めることができた。

一方、今回の新型コロナウイルスを見ると、感染者は入院での隔離を原則として中国でも対応されていたが、急激に患者数が増加したため病床の確保が一時期追いつかなくなっていたようである。この隔離されなかった患者が、市中で感染拡大に拍車をかけたことが疑われる。これに対して中国は2つの病院を新たに建設し、増大する患者数に対応するという力業を見せた。

日本でも、PCR検査で陽性と診断された患者については感染症指定病院、あるいは協力病院での対応を依頼しているものの、中国からチャーター機で帰国した感染者やダイヤモンド・プリンセスでの感染者を先に受け入れていたため、国内の感染者を受け入れるキャパシティが狭められている可能性がある。だが、この初期の患者の方々も順次退院に向かっているため、国内感染に対して時間を稼げれば重症患者に対するベッドを確保できるであろう。

しかしこの先、一日あたり数十人という新規患者が発生すると、日本においても病床の確保が追いつかなくなるかもしれない。

気づかないうちに濃厚接触は起こる


SARSとは異なり新型コロナウイルス感染症では、潜伏期間中[1]あるいは無症候性感染(キャリア)[2]であっても他者に感染させ得ることが報告された。また感染性は証明されていないが、一旦治癒したケースで、新型コロナウイルス感染症が再燃するケースも日本や中国で複数件報告されている[3]。

潜伏期間中に伝染し得る感染症においては、発症してから入院隔離したのでは感染拡大を止めることはできない。なぜなら病院を受診したときには、すでに何人かに感染させている可能性があるからである。そのため伝染性をもつ感染症、特に今回の新型コロナウイルスに対しては、患者だけではなく見た目が健康な濃厚接触者に対しても、潜伏期間である14日間にわたって個室で検疫をする必要が出てくる。

中国においては、感染症患者との濃厚接触者は自宅あるいは特別施設で検疫となった。一方の日本では、患者との濃厚接触者は「最終曝露から14日間健康状態に注意を払い、37.5℃以上の発熱または急性呼吸器症状が出た場合、医療機関受診前に保健所へ連絡する」となっている。

日本の場合、濃厚接触者であっても発症前は普段どおり日々過ごすことができてしまうため、ウイルスの潜伏期間中に感染を広げる可能性がある。

1. Rothe C, et al. Transmission of 2019-nCov infection from an asymptomatic contact in Germany. N Engl J Med Published online Jan 30, 2020
2. Bai Y, et al. Presumed asymptomatic carrier transmission of COVID-19. JAMA Published online Feb 21, 2020
3. Lan L, et al. Positive RT-PCR Test Results in Patients Recovered From COVID-19. JAMA Published online Feb 27, 2020

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文=浦島充佳

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