77歳を迎える私が、始めたばかりの挑戦 影響を受けた2人の紳士

2017年、Tazaki財団の第1期奨学生として留学した5人の若者と筆者(左)、妻で会長の田崎ひろみ(右)


橋本先生は常に口癖のように、生徒たちに対し「君たちは常に小さな紳士、小さな淑女でいるように心がけなさい」と言っていました。小学生だった私は紳士淑女がどのような人物であるのかわかりませんでしたが、調べたところ「知性や教養を備えた、礼節ある男性、気品のある女性であれ」ということを理解し、私は知性と高い教養を身に着けることを目指すきっかけになったのです。

後に、私の渡英を決定付けた『自由と規律 イギリスの学校生活』(池田潔著・岩波書店)の本にも、英国の教育が「紳士道の修行」であることについて述べられていたことも大きなきっかけです。

もう一人影響を受けたのは、私の母方の祖父です。祖父は戦前、長い間英国に駐在していたこともあり、自宅では英語の本を片手にソファーでくつろいだり、朝食は目玉焼きとベーコン、トーストといった英国の文化が家の中に溶け込んでいました。それに感化されたことも私が英国を目指すきっかけだったのだと思っています。

その祖父が私に良く言ってくれていたことがあります。それは、「人に迷惑をかけぬこと、できれば人のお世話をすること」。

祖父が言っていたことを、Tazaki財団を通じてようやく叶えることができたと思っています。幼少の頃から英国に感化された経験により、日本を飛び出して英国で学んだからこそ今の私がある。今思うと、私が英国を目指したことは運命だったのかもしれません。「一期一会」という言葉がありますが、誰かの出会いがその人の人生を一変させることがあるのであれば、私は人々の人生に良い影響を与える人物でありたいと常に思っています。

2020年でTazaki財団は設立以来4年目を迎え、今年も数名の日本の若者を英国に送り出す準備を進めており、英国に留学する若者は合計で25名程度になる予定です。また、語学研修生は80名を超え、その中には財団の支援なしで英国の大学留学をする生徒も出てきたことを嬉しく思っています。

今年、私は喜寿を迎える年齢になりますが、挑戦はまだ始まったばかり。これからの日本と世界を牽引するようなグローバルリーダーの育成は、私のライフワークとして続けていきたいと考えています。

連載:グローバルリーダーの育成法
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