その背景を説明しよう。
公職者ローン返済免除プログラムを廃止
トランプ大統領は、2020年2月10日に米議会に提出した2021会計年度の予算教書で、学生ローンに関連していくつか変更するよう要求している。これは、教育省に対して求めている56億ドルの予算削減要求の一環だ。
トランプはここ数年と同様、公職者を対象にした学生ローン返済免除プログラムを廃止すべきだと繰り返した。提出された予算教書が議会に承認されれば、「公職者ローン返済免除プログラム(Public Service Loan Forgiveness program)」は廃止されることになる。
公職者ローン返済免除(PSLF)は、2007年にジョージ・W・ブッシュ大統領が創設した連邦政府プログラムで、連邦政府から学生ローンを借りている人が、連邦政府や州政府、地元政府、内国歳入法第501条C項3号で定められている非営利団体などの対象公的機関で、フルタイムで働き(勤務時間が週30時間以上)、10年以上にわたって期日どおりにローンを返済した場合に、債務残額が免除される制度だ。
廃止を求める理由
トランプ大統領とベッツィ・デヴォス教育省長官はこれまで、学生ローン債務者と連邦税納税者、双方のニーズについてバランスを取りたいと言明してきた。2人の主張は、この公職者向けプログラムを廃止すれば、連邦政府が貸与した数十億ドルに上る可能性がある学生ローンを免除せずに済み、その分の連邦政府資金を節約できるというものだ。
とはいえ、民間企業よりも給与が低いことの多い公的機関や非営利団体の仕事に人々を誘導し、そこで働き続けてもらうためには、このプログラムが不可欠だと考える人もいる。PSLFプログラムの支持者は、廃止してしまえば、学生ローンを借りている人が公職に就くのを思いとどまり、軍や警察官、消防士、救急隊員、検察官、国選弁護人といった公職者に悪影響が及ぶ可能性があると考えている。重要なのは、今回の提案で影響を被るのが、すでに公職に就いて学生ローンを返済している既存の債務者ではなく、これから学生ローンを借りる未来の債務者であることだ。