“眼鏡選び”についての記事はWEBでも雑誌でも山ほどあるのに比べ、“眼鏡店選び”の記事は決して多いとはいえない。なぜなら、眼鏡店選びの基準は簡単に明示できるものではないからだ。
眼鏡技術者に公的な資格制度がない日本
たしかに、眼鏡店選びは難しい。近所の店舗に好みのフレームが置いてあるとは限らないし、実際に出来上がってからでないとその良し悪しが判断しにくい。飲食店であれば何店舗かを食べ比べたうえで行きつけを見つけることができるが、眼鏡を何本か作ったうえで比較するというのは、現実的な話ではないだろう。だからこそ、店選びの基準が欲しいわけだが……。
「ユーザーの利便性を高めるために、私たち眼鏡店は他店との比較という波にさらされるべきなんです」。そう語るのは、吉祥寺の眼鏡専門店「オプテリアグラシアス」の店長、伊藤次郎さんだ。眼鏡店スタッフを対象とした検査技術の勉強会を定期的に主催する伊藤さんは、以前より眼鏡屋選びの指針となるサイト、いわば“食べログ”の眼鏡店版を作るべきだと主張している。
デザインや価格に加え、スタッフの技術や知識というユーザーにより近い接点が重要だという(写真:オプテリアグラシアス店内)
「そもそも、日本では眼鏡を作る人に公的な資格制度がありません。極端な話をすれば、誰でも眼鏡店を開業でき、検査を行なっても法律的には問題がないんです」(伊藤氏)。
公益社団法人 日本眼鏡技術者協会が発行しているリーフレットによれば、眼鏡技術者に公的資格を与えている国は世界でも40か国以上にのぼっている。
各国でその内容は異なるが、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカをはじめとした欧米諸国、さらに中国、台湾、香港、マレーシアやシンガポールなどアジア諸国でも国家資格化されているという。
日本では平成13年に「認定眼鏡士制度」が制定された。こちらは先に紹介した日本眼鏡技術者協会が運営を行なう民間資格であり、知識や技術を審査認定することで、ユーザーが眼鏡士、眼鏡店選びの参考にできるよう設けられたものだ。資格者はS級、SS級、SSS級とわかれており、有資格者とその所属店舗は協会のWEBサイトで確認することができる。
認定眼鏡士が在籍する店というのは、一定の目安にはなろう。しかし、資格の取得は義務付けられているものではない。長年眼鏡店に勤めるベテランながら個人や店の方針等で取得をしていない人もいるので、資格の有無だけで安易に判断できない面も少なからずある。