そんなとき、企業はブランドや商品をリブランディングしようと考える。そのときに必要なのは、時代に合った売れる商品を創り出せるようになるための「マーケティング感性」だ。そしてリブランディングをするときに企業が陥りやすい罠が3つある。
1. 流行りものに乗ってしまう。
2. アップデートだけで済ませてしまう。
3. いきなり調査してしまう。
今回は実際にある老舗化粧品メーカーの最新の成功事例を通して、この3つの罠にはまらないようにするためには具体的にどうすれば良いのかを学びたい。
成功事例:老舗化粧品メーカーの場合
これから紹介するのは、浅草にある老舗化粧品メーカー「コージー本舗」が製造する、アイメイクブランド「DOLLY WINK」の事例。「つけまつげ」からスタートしたDOLLY WINKは、今ではアイライナー、アイシャドウ、マスカラ、アイブロウと多種のアイメイク商品をラインナップする。
2009年誕生当時のDOLLY WINK
DOLLY WINKのブランドプロデューサーは「ギャル」「カリスマ読者モデル」ブームの火付け役であった益若つばさ。DOLLY WINKが誕生した2009年は、いわゆるギャルマーケットが社会や経済を牽引していた時代だった。ギャルが社会現象になっていた当時、DOLLY WINKはダントツの売上を誇り、最先端で、可愛くて、誰もが気になって、マスターゲットの心をとらえ、時代に存在感を放っていた。
2018年に直面した「つけまつげ市場」の状況
2018年、ギャルブームが衰退。ギャルメイクの象徴だった「つけまつげ」の市場規模はピーク時の3分の2に大幅縮小した(出典:富士経済2018「アイラッシュ(つけまつげ)関連品」)。ナチュラルメイクが主流になり、マツエク(まつげエクステ)の普及も脅威に。
世の女性たちが「つけまつげ離れ」していく中で、発売から10年経ったDOLLY WINKブランドの売上げも、全盛期の2分の1以下へと大幅に落ち込んだ。
かくして「つけまつげ」は「オワコン」の烙印を押された。ファッション誌や美容誌などのメディアはつけまつげを掲載したがらなくなった。流通はつけまつげの配荷を拒絶するようになった。若年女性のトレンド品の発信拠点であるバラエティショップへの配荷は絶望的となり、トレンド品としては致命的な状況に。競合はつけまつげ市場に見切りをつけ、次々と市場から撤退していった。