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2020.02.11 18:00

闘病中の子どもに付き添うのはいつも母親? 「父親」だからできること

LightField Studios / Shutterstock.com

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私は自分の息子が小児白血病になったことをきっかけに、全国に17万人いるというスペシャルキッズ(病気や障害があり、なんらかのケアが必要な子どもたち)を対象とした医療ケアグッズの販売を行うECサイト「チャーミングケアモール」を立ち上げた。

そのサイトでケアグッズを購入いただいた第1号の顧客が、闘病中のお子さんを持つ「お父さん」だったのは、私にとって意外なことだった。

闘病する子どもの付き添いや日々のケアをするのは「お母さん」であることがほとんどだ。実際、私の息子が闘病中に、病院で目にしたときも、付き添いは8割以上がお母さんだった。

以前、このコラムで「24時間体制で保護者が疲弊する子どもの入院付き添い」というテーマを扱ったが、執筆の際にアンケートをとったきも、回答者のほとんどは女性で、男性はほんの数名だけだった。そのときの数少ない男性の回答は次のようなものだ。

「本当は、子どもも妻に付き添って欲しかったと思うのですが、当時、1歳児を抱えていたため、苦渋の決断で、私が仕事をセーブして付き添いをすることにしました。生半可な気持ちで看病することは許されませんし、自分で自分にプレッシャーをかけて、絶対に元気に家に戻してやるまでは、泣き言厳禁と誓いました」

「子どものメンタルケアが決して上手くできたとは言えませんが、基本、自分が叱咤激励する(時には喧嘩)役、妻はフォロー役に徹し、祖父母と私の妹はほぼ甘やかしのオアシス的な役回りをしてもらい分業する形で乗り切っていました」

「病気が進行してつらい時は、あえて1人になる時間を増やした結果、担当看護師にも何かと悩みを吐露できるようになりました。幸いCLS(チャイルドライフスペシャリスト)の方がいましたので、親子どちらも専門的なアドバイスをいただき、時には悩みの相談にも乗っていただきました」

これらの回答からは、子どものメンタルケアなどに苦労しながらも、どうにか家族の苦難を乗り越えようと努力している「お父さん」たちの様子がうかがえる。

お父さんが困難と感じるのは「時間の管理」


今回、スペシャルキッズを持つお父さんたちに向けて「家族とのかかわり方に関するアンケート」を行ってみた。調査は、SNSなどでの公募と、子どものお見舞い品販売サイト「マミーズアワーズショップ」で治療や闘病で変化した子どもの外見をケアするための商品を購入したことのあるお父さんを対象とした。
質問は7問で計18名のお父さんたちが回答してくれた。

まず、お父さんが、家族として一番楽しいと感じる時間は、下記のように「家族での外出時間」が圧倒的に多いという結果が出た。お父さんは子どもに病気や障害があったとしても、楽しみの方向性を、日常生活より「外」に向けている傾向があることがわかる。

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家族とのかかわり方に関するアンケート「家族として一番楽しいと感じる時間はどんな時間でしょうか?」

また、家族として一番大切に考えているケアに関しては、まずは子どもが第一(きょうだい児も含む)。その次に妻のメンタルケアが挙がっているが16.7%と低い値だった。このことから、夫婦共に子どもに意識が向いていて、介助者(主に妻)へのケアが手薄になってしまいがちなこともわかった。


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家族とのかかわり方に関するアンケート「家族として一番の考えているケアはどんなケアでしょうか?」


次に、スペシャルキッズを持つお父さんとして、日々の生活のなかで「困難」を感じることについての質問では、子どものケアがトップなのに続いて、「時間の管理」が次に来ているのが印象的だった。

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家族とのかかわり方に関するアンケート「日々の生活の中で感じる困難は、どのような属性でしょうか?」


回答した男性に詳しく聞くと、次のような答えが返ってきた。

「時間の管理に関しては、男性と女性に差が出る気がする。男性はどうしても仕事をしながら子どものケアをするので、仕事との調整がやはり気になっているのかなと感じる。
また、子どもは、普段、接し慣れている妻を恋しがる傾向があり、そこをどうしたらいいものかと思い悩みながらも、かといって、こういうことを面と向かって話す機会もない」

女性はコミュニティなどで日常生活について話をする機会に恵まれているが、男性は一般的に仕事をしている時間が長いこともあり、なかなか日常生活の話をする機会が少ない傾向があるのではなかろうか。

昨今は、パパ同士のコミュニティなどもできつつあるが、なかなかそこに病気や障害という重めのテーマで話をしていくというのは敷居が高いようにも感じる。さまざまな思いを心に抱きながら、お父さんたちは過ごしているという一面が浮き彫りになった。
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文・写真=石嶋瑞穂

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