進化するシャンパーニュ。職人たちが表現する土地の個性

J-M セレック(Jean-Marc Sélèque)のジャン・マルク・セレック

「Les Artisans du Champagne」という生産者グループがある。直訳すると、「シャンパーニュの職人たち」。16のメンバーは、自分が所有する畑からワインを造る小規模な生産者で、それぞれが個性的で、今をときめく生産者ばかりだ。

2011年に同じビジョンを持った生産者により始まったこのグループは、毎年4月、シャンパーニュ地方の2つ星レストラン「レクレイエール(Les Crayeres)」で試飲会を開催。世界中からワイン関係者が押し寄せるほどの注目を集めている。

シャンパーニュの魅力のひとつは多様性だ。畑の個性、そこで育つブドウの性格、そしてワインを造る生産者の考え方もそれぞれであることから、結果的に様々なスタイルのワインができる。

このグループのメンバーは、個々の独自性を認め合いながら、「シャンパーニュは泡だけがすべてではなく、まずは、優れたワインがベースにある」という考えのもと、その土地の特徴を最大限引き出したワインを世に出したいという共通のパッションで結びつく。こうした思想のもと作られるワインを試飲することで、よりミクロなレベルでシャンパーニュの魅力に触れ、新しい発見があるかもしれない。

今回はその中から一押しの5生産者(Huré Frères, Pierre Paillard, J-M Sélèque, Pierre Péters, Savart)を紹介したい。

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ユレ・フレール:真摯で正確なワイン


ユレ・フレール(Huré Frères)は、ルード村(Ludes)に拠点を持ち、両親から畑を受け継いだ兄弟が、自分たちの信念にそったワイン造りをしている。兄のフランソワは、Les Artisansグループの創設者の一人で、ビジョンをもった人物。

ルード村は、畑が北向きの斜面にあり、そこで育ったブドウは、ワインにフレッシュさや骨格をもたらす。土壌が入り組んでいて、黒ブドウのムニエ、ピノ・ノワール、そしてシャルドネと、土地の特徴に応じて3種類のブドウが栽培されている。特に、土壌に砂質が混じる箇所はムニエの栽培に最適で、「華やかで繊細、エレガントなワインを生みだす」とフランソワは言う。

入門編のNV「Invitation」は、心地よく親しみやすい味わいで、フランソワ曰く「朝から楽しめるシャンパーニュ」。そして、兄弟の想いが詰まった渾身作は「4 Elements」という名のシャンパーニュで、単一の畑、ブドウ品種、収穫年、そして造り手の考え方という「4要素」を表現している。造り手の、真摯にワインに向き合う姿勢が表れているワインで、その想いを感じながら、少し姿勢を正して飲みたい。

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フランソワ・ユレ(François Huré)
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文=島悠里

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