ピエール・ペテルス:最良のブランドブランの造り手
ピエール・ペテルス(Pierre Péters)の拠点は、シャルドネの銘醸地であるメニル村。表土が薄く、その下にはチョーク土壌が地中深く広がり、長熟でシャープなシャルドネを生み出す。なかでも、ピエール・ペテルスは、100%シャルドネで造る「ブランドブラン」の最良の生産者の一人だ。
以前、秋のブドウ収穫時に当主のロドルフ・ペテルスを訪ねたことがある。収穫は、一つ一つの細かい判断がワインの出来を左右する大事な時期だが、ロドルフの緻密で考え抜いたワイン造りを間近で見て、出来上がったシャンパーニュの質の高さの理由がわかった気がした。メニル村で最良の畑といわれる、「Les Chétillons」のブランドブランは、筆者もお気に入り。繊細で一筋通った鋼のような芯の強さがあるが、寛容さと旨みも持ち合わせていて、リリース時からも楽しめる。
そして、シャルドネの名手が作る隠れアイテムが、娘の名前を冠したロゼ・シャンパーニュの「Rosé for Albane」。メニルの透き通ったピュアなシャルドネに、柔らかい果実味のムニエのロゼワインをブレンドして造る、チャーミングな仕上がりのワインだ。
ロドルフ・ペテルス(Rodolph Péters)
サヴァール:明るく緻密なワイン
サヴァール(Savart)の現当主、フレデリック・サヴァールは陽気で周りを明るくするキャラクター。元々サッカー選手を目指していたが、実家のドメーヌに戻り父を手伝い、2005年から家業を引き継いだ。飲み手としてもワイン好きで、普段から様々なワインを楽しむ。特にブルゴーニュワインがお気に入りで、彼のワイン造りにも影響を与えている。
拠点があるエキュイユ(Ecuiel)は、ピノ・ノワールの栽培に適した土地で、サヴァールの所有する4ヘクタールの畑も大部分がピノ・ノワールだ。それに少量のシャルドネが加わる。
代表的なNVの「L’Ouverture」は100%ピノ・ノワールで、マロラクティック発酵をし、フレデリックのように明るく近づきやすいが、しっかりとした骨格と余韻があるワインだ。ロゼ・シャンパーニュの「Bulle de Rosé」は、さくらんぼや苺の果実に加えて,繊細さと複雑さがあり、筆者のお気に入り。
サヴァールは生産量が少ない上に、その人気の高まりから、今では世界中で手に入りにくいワインとなったが、ワインの美味しさに加えて、当主のキャラクターもその人気の理由の一つだろう。
フレデリック・サヴァール(Frédéric Savart)
島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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