フェラーリのDNAを真に継ぐ、フェラリスタ歓喜の「F8 TRIBUTO」

東京都現代美術館で日本デビューを飾ったフェラーリ F8 トリブート。空力という科学を、美のなかにうまく取り込んでいるのが特徴。

なんとも刺激的な名称を持つフェラーリの新型車が2019年、日本で公開された。F8 トリブート。「F」はフェラーリの頭文字で、「8」はエンジンの気筒数を表す。

フェラーリは、1970年代初頭までは、レース資金を稼ぐために、12気筒エンジンを搭載した市販車を作っていた。顧客は欧州の貴族、アラブの王族、さらに映画スターやミュージシャンと、フェラーリの活躍を応援する限られた数の富裕層だった。そして、もっと幅広い層に、ピュアなスポーツカーを公道で楽しんでもらおうと開発されたのが、V型8気筒エンジン搭載車である。73年デビューのディーノ308GT4から現在の488GTBにいたるまで、“ミドシップのフェラーリは8気筒”という公式が受け継がれてきた。

日本でF8 トリブートが発表された場所は、東京都現代美術館だ。ここはモダンアートを幅広く取り上げている美術館であり、刺激的なフェラーリのニューモデルを飾る舞台として、とてもふさわしい場所のように思えた。

F8 トリブートに注目すべき理由はいくつもある。フェラーリ極東中東エリア統括CEOのディーター氏は言う。

「フェラーリ F8 トリブートは、跳ね馬の古典的な2人乗りベルリネッタの最高の表現を表す新しいミッドリアエンジンスポーツカーです。ユニークな特性を備えた車であり、その名前が示すように、フェラーリの歴史の中で最も強力なV8へのオマージュです。フェラーリ F8 トリブートは488GTBに代わり、V8モデルとして最高のパフォーマンスとドライバーの最大の関わりがマッチしています」



コクピットには、488GTBより小径のステアリングホイールから、タッチパネル式となるパッセンジャーディスプレイまで、F8 トリブート専用の装備が揃っている。

車名にある「トリブート」は、類推できるように、英語のトリビュートとほぼ同義。フェラーリによると、過去のV8モデルに対する“敬意”をこめてスタイリングを開発したという。

たとえば、エンジンルームを覆うポリカーボネート製リアウィンドウは、8気筒搭載のスペシャルモデル、F40(87年)のものを現代的にアレンジしたそうだ。また、片側2灯式の丸型テールライトは、大ヒットした8気筒モデル、308(75年)および328(85年)のそれを彷彿させるようにデザインされている。

このようなアイデアを評価する、いわゆるフェラリスタ(フェラーリの熱心なファン)が日本には多い。

「アジアはスーパースポーツカーにとってたいへん重要な市場です」。そうディーター氏は話す。

「アジアはフェラーリにとってエキサイティングな地域であり、急速に拡大する富裕層人口が高級ブランドを切望しています。フェラーリはこの需要に応えるために、新しいセグメントの新しいオーディエンスにリーチするために製品を拡大しています」
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text by Fumio Ogawa, photographs by Tsukuru Asada (secession), edit by Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN 空気は読まずに変えるもの日本発「世界を変える30歳未満」30人」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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