場所を同じく開催された、夜のレセプションも特別なものだった。招待客がロッソコルサ(レーシングレッドの伊語)で彩られた会場に足を踏み入れると、歴代のV型8気筒搭載のフェラーリモデルと対面するという、うれしい驚きが待っていた。
「若いとき、308に憧れたんだ」「いちどはF40のステアリングホイールを握ってみたいね」
シャンパーニュの名門ヴーヴクリコのフルートグラスを手に、興奮したようなゲストの声がいたるところから聞こえてきた。
ロッソコルサ(レーシングレッド)を効果的に使ったレセプション会場にはF8 トリブートをはじめフェラーリ各モデルを展示。2016年から4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーにおいて最優秀エンジンに選ばれたことを強調する、3.9リッターV8ターボエンジンに向かう回廊などの印象的な演出が随所に。
47年にエンツォ・フェラーリのレースにかける情熱が生んだフェラーリというメーカーは、世界中の富裕層に受け入れられ、ともに成長してきたともいえる。フェラーリの世界観をシェアすることは、ほかにない精神的な充足感に結びつく。ディーター氏は言う。
「私たちはイベントや経験を通じて彼らと常に関わります。ブランドと感情的なつながりを築くフェラリスタのライフスタイルにブランドの力があることを知っているからです。私たちは、より親密なレベルで顧客に関与し、世界中の何百万人ものファンやフォロワーを生涯の信者にするために誘惑してきた精神と情熱をさらに発展させ、強化したいと考えています。私たちは顧客満足度を向上させ、フェラーリの経験をお客様により近づけるためにオーダーメイドのサービスを提供し続けます」
そしてディーター氏はフェラーリの特徴を「ビスポーク(あつらえ)のスタイリング、ウルトラシャープな応答性、非常に速いパフォーマンス、いかなる速度域でも味わえる見事な加速性、そしてすべてのフェラリスタに知られている、ドライビングとともに聞こえてくる爽快なサウンドトラック」を挙げ、それらがフェラーリのDNAに刻みこまれた要素であるとする。
話を冒頭のF8 トリブートに戻すと、このクルマはまさにそのDNAで出来上がっているのだ。
ボディスタイルは、有機的で、彫刻など立体造形にすぐれたイタリア文化のなかで生み出されたもの、と納得がいく美しさだ。
静止していても走っているようにデザインすることが求められる、とかつてフェラーリのスタイリスト(デザイナー)から聞いたことがある。まさにそのスタイリングポリシーの果実だ。
フェラーリがつくる世界に身を置くことはなんと素晴らしいことか。あらゆる意味で創造的な刺激がある。他の追随を許さない存在感だ。