ニュースを騒がせる「匂わせ」 そこに隠れた女子の業を考える

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年末年始、各種芸能ニュースで耳にした言葉に「匂わせ」がある。「匂わせ」とは、それとなくほのめかすこと。特にSNSの投稿において、名言ではない表現をして「これって、そういうこと……?」と読み手の想像を煽るような投稿を揶揄するものです。

ベタなのは、食事の写真に、ちらっと正面に座っている男性の腕を写すことで「私は1人でもなく、女友達とでもなく、男性と一緒に食事しています」とほのめかすもの。または、写真でなく意味深な言葉によって、読み手の憶測を呼ぶものもあります。

匂わせには必ず書き手と読み手が存在し、今世の中で匂わせが話題になっている最大の理由は、読み手の「匂わせパトロール」の激化です。興味のある書き手の投稿を見てその意味を類推する「匂わせパトロール隊」が増え、その高い能力により、パトロールの対象になった暁には何年も前のことも些細なことも、もれなく発掘されてしまいます。

書き手が意識的に匂わせているか否かに関わらず、その発信で腹を立てたり悲しんだりする人もいるわけで、第三者からすれば「気にしなければいい」となだめたいこともありますが、匂わせ騒ぎも悪いことだけではありません。

なぜなら、匂わせと疑わしき発信内容は広まりやすく、そこに映っているアイテムやブランドの購買にも繋がります。「芸能人AとBが同じネックレスをつけていた。交際しているのかも。そういえばあのブランド気になっていたから私も買ってみようかな」といった具合に。

また、匂わせで話題になった書き手には新たな読み手が集まるため、注目度が上がり、新たな仕事が舞い込むことも多々。不本意なきっかけかもしれませんが経済効果も見られるのです。

そして、面白いのは、今「匂わせ」が一周回って大衆化し、憧れの行動にもなってきていること。これまで、匂わせることができるのは一部の限られた人だけでした。既に注目され、パトロール対象になり得る人たち。でも考えてみれば、そこに読み手がいる限り匂わせることは可能です。匂わせという行為の認知度が上がったことで、有名人でなくても、些細な発信でも「匂わせじゃないか?」と思わせやすくなっています。

そんな土台が築かれた中、先日ツイッターであるエピソードが話題を呼びました。それは、「私、彼氏ができたら絶対に匂わせるから、気づいてね」「わかった」と話している女子高生のグループがいて微笑ましかったという話。

匂わせる人は非難されかねないことを承知で「私も匂わせたい」と本音を当然のように友達に伝えられる素直さが人々をほっこりさせたのでしょう。そして彼女の本音は、多くの人が共感できるものでもあったのだと思います。

確かに、わざわざ言葉にはしないけど「気づいてくれたら嬉しいな」とサインを出すことは、SNS投稿に限らず世の中あちこちに溢れています。自己顕示欲からの匂わせもあれば、奥ゆかしさや相手への配慮からの匂わせもあるのです。

今後はもっと「匂わせてみる」行動が広くなり、「匂わせ」という言葉への反感は薄まっていくのではないでしょうか。女子が己の業と向き合い、認めていく過程がそこにある気がします。

女子は、非難し、憧れる。昨今の匂わせ騒ぎは、女子にとって非難と憧れが表裏一体なのだという真実を匂わせてくれます。そこが女子の厄介なところであり、愛おしいところでもあるのです。とはいえ、人を傷つけることを意図した匂わせはご法度。匂わせリテラシーもまた、令和を生き抜く上で必要な能力と言えるでしょう。

連載:経済を動かす「女子」の秘密
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文=山田 茜

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