プライバシーに関する懸念はあるものの、このようなスマートショッピングは大きな可能性を秘めている。食品小売市場は全米で9000億ドル(約99兆860億円)の規模があるが、従来型店舗の売上はそのうち44%を占めるにすぎない。シアトルに本拠を持つオンライン小売大手のアマゾンが狙うのは、残りの56%だ。
世界的な投資銀行RBCの調査結果によれば、アマゾン・ゴー店舗の平均売上は、通常のコンビニエンス・ストアの1.5倍に達しているという。ということは、56%を狙うという話も、それほど突飛な野望ではない。
アマゾンは、誰が見ても有力な投資先だ。だが私から見ると、より目立たない企業の方が、投資先としては魅力的に映る。この食品小売業革命のなかで、投資家にビッグチャンスをもたらす隠れた有力企業がある。それがソニーだ。
ソニーの製品と言えば、テレビやプレイステーション、カメラ、カーステレオといったアイテムが頭に浮かぶかもしれない。だが、これらの電子機器を魅力ある製品にしている、共通する部品に目を向けてみよう。
日本の消費者向け電気製品メーカーであるソニーは、カメラやスマートフォン、商用ドローンに搭載されているセンサーに関して50%のシェアを持っている。その規模や、充実した知的所有権のポートフォリオ、クラス最高品質のデバイスは、競合他社の追随を許さない。
スマートフォンをはじめとする、さまざまな応用分野で必要とされる低コストのセンサーを供給する上で、ソニーは絶好のポジションにある。
しかもこれは、事業計画として堅実だ。
実のところ、他社にとっても、自社でセンサーを開発するより、ソニーから購入した方が安上がりだ。ソニーにとってみれば、これは利益率の高い事業を意味する。
そして今、これらのセンサーはIoT分野で続々と採用されている。
世界に無数に存在するソニーのイメージングデバイスは、適切な人工知能(AI)ソフトウェアと組み合わせることで、世界を記録するだけでなく、世界を実際に認識する機能を持つようになるだろう。