意外な展開もあった。KDDIで地方創生を推進する部署を新設し、社内で人材を公募。主に50代以上を対象にして公募したところ、7名の採用枠に予想以上に多くの応募が殺到し、熱い想いの人々が地方で仕事をしたいと声をあげたそうです。
なぜ50代を募集したのかというと、現在50代の世代には子ども時代の記憶があるからです。その記憶とは町が元気で賑わっている風景。楽しかった時代の記憶と、あまりにも落差の大きい現実。この感覚が50代の人たちに、「自分にも何かできるのではないか」という気持ちに火をつけたのです。
この1月にすでにいくつかの地域で、KDDIと共に教育現場へのプログラミング導入に向けた提案をすることが決まっています。どの地域も、やる気がないのではなく、何をやっていいか分からず困っているというのが実情なため、まずは鯖江で行っているモデルを知ってもらい、体験してもらいます。
また、KDDIだけではなく、ビジネス向けソフトウェアの開発を手掛けるドイツの大手ソフトウェア企業SAPも、鯖江での地産地消の産官学連携プログラミング教育モデルを展開するべく会津若松や沖縄で提案してくれています。東京でのプログラミング教育を押し付けるのではなく、地方で生まれたモデルを展開していく。「お金がない地方だからこそのプログラミング教育モデル」であり、地方の実情にあった、ITの担い手育成モデルです。
東京の企業がこれだけ本気なのだから、現場である地方はスピード感を持って答えていく必要があると思います。
かつて地方から東京に出ていった50代が、都会で得たノウハウをもって地方で次の世代を育てる。この「人と世代の大循環」こそが地方を活性化させる鍵なのではないでしょうか。