オピオイド、自殺、高い薬価... 米国人の寿命が縮まった原因は?

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米国人の平均寿命は1959年の69.9歳から2013年の78.9歳へと一貫して伸び続けていた。ところが2014〜17年は、成人期中期(25〜64歳)の平均余命が低下していた。

成人期中期の死者数が特に増加していたのは、ニューイングランド地方(メーン、ニューハンプシャー、バーモントの3州)とオハイオバレー地方(インディアナ、ケンタッキー、オハイオ、ウェストバージニアの4州)。2010〜17年に成人期中期の死亡率が特に高かったのは、メーン、ニューハンプシャー、ウェストバージニア、オハイオの4州で、死亡率は7年間で20〜24%高まっていた。

死亡率の上昇傾向は、すべての人種・民族や都市部と地方部の両方でみられ、社会経済的状況による違いもなかった。

米政府の国民1人当たりの医療支出は世界で最も高く、2018年は1万586ドル(約116万円)。世界2位のスイスは7317ドル(約80万円)だった。米国は医療支出が最も多いにもかかわらず、その効果は2017年に国民1人当たり3000ドル(約32.6万円)前後を支出した他の21カ国と同じ程度だった。

米国の平均寿命はなぜ縮んでしまったのだろうか? 以下に考え得る原因を挙げよう。

・薬の過剰摂取

成人期中期での薬の過剰摂取による死亡のリスクは1999年から2017年にかけて女性で486%、男性で351%上昇した。オピオイド系鎮痛剤による死亡リスクは、2000〜2014年に倍増。オピオイドは、2017年の過剰摂取による死亡例の67.8%を占めていた。2017年の薬の過剰摂取による死亡率が特に高かったのはウェストバージニア州、オハイオ州、ペンシルベニア州、首都ワシントン、ケンタッキー州だった。前述の通り、このうち3州は成人期中期の死亡率増加が著しい地域だ。

・自殺の増加

米国の自殺率は1999年〜2014年に年齢や性別にかかわらず24%増加した。特に2006年以降は自殺率の増加が顕著に見られる。増加幅が最も大きいのが10〜24歳の女性の200%で、45〜64歳の男性の増加幅は43%だった。メンタルヘルス治療の大きな障壁となっているものの一つに、高い医療費があるとされる。
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編集=遠藤宗生

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