ビジネス

2019.12.24 07:00

いまスポーツビジネスに求められる、経営を担う「プロ人材」とは


──そのためにはどのような人材が求められているのでしょうか。

中村:必ずしもその競技が好きである必要はありません。むしろ従来と異なる発想を元にビジネスを拡大できる人であれば、Jリーグに限らず日本のどのスポーツ業界でも求められると思います。

例えば米国のマイナーリーグ・ベースボールのチームは850試合連続で完売したことがある。それはなぜか。上質の野球を観たければ大リーグに行けばいいのですが、マイナーリーグの試合にチケット代金を払うのは、スタジアムの雰囲気を楽しんだり、仲間とお喋りしたりできる場があるからです。チームの勝ち負けにかかわらず、価値ある体験を提供しなければならない。スポーツビジネス人材は、「オフ・ザ・ピッチの選手」であり、有能なプロフェッショナルが求められます。

──スポーツビジネスが他業種と異なるところはどこでしょうか。

中村:感情を「共有」できるところです。競技観戦には家族や恋人、友人と行くことが多いと思いますが、その一喜一憂した観戦体験をSNSで拡散し、感動を共有することができる。しかもそれは世代間や人種を超えています。少子高齢化が進み、外国人労働者がますます増加すると、スポーツは基幹産業に成長するでしょう。

──昨年からハワイのスタジアムで「パシフィック・リム・カップ」という日米加、メキシコの4カ国による国際サッカー大会を主催していますね。

中村:スポーツビジネスの収益の多くは選手や監督などタレントに流れる。その仲介手数料をとるビジネスが多いのですが、それには限界がある。ビジネスとしてスケールさせるには、権利元にならないといけない。そこで自分でハワイの大会を立ちあげました。

将来的にはVC(ベンチャー・キャピタル)からの投資を促して予算を拡大し、安定的に強豪クラブを呼ぶなどして大会の価値を上げ、投資に見合うような環太平洋リーグを欧州チャンピオンズリーグやリベルタドーレスに次ぐようなcv規模にしたいと思っています。いずれJリーグとMLSという環太平洋の二大リーグが組み、ハワイを舞台に可視化できるようなプラットフォームをつくれれば、可能性は大きく広がると思います。

──中村さんの原動力となるモチベーションと夢を教えてください。

中村: MLSでは、スタッフの誰もが米国で一番伸びているスポーツリーグで仕事をしている、という誇りがあった。FCバルセロナでは、スペイン・カタルーニャ地方のシンボルであるという歴史と伝統の誇りに支えられていました。

海外で仕事をしてきた私は常に「外人」でしたが、日本人である自分が日本のスポーツを誇りに思えるようにしたいと、いつも思ってきました。日本に学校をつくる計画もあります。日本人のスポーツビジネス人材が海外へと飛躍するのを、支援したいですね。


中村武彦◎1976年、東京都生まれ。青山学院大学法学部卒。米国でMBAを取得後、MLS、FCバルセロナを経て、2015年にサッカー国際試合のマッチメーキングなどを行う会社を設立。

文=武田頼政 写真=木下智央

この記事は 「Forbes JAPAN 「スポーツ × ビジネス」は、アイデアの宝庫だ!12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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