トップ1000に日本から140店以上
小山裕久(以下、小山):フォールさんは世界的なレストランランキングを発表していますが、いちばん公平だとおっしゃっていますね?
フィリップ・フォール(以下、フォール):まず、レストランランキングといえば皆さんの頭に浮かぶ有名なものがいくつかありますよね? でもそれらは覆面の審査員がいることになっていたり、ある特定のジャーナリストが選出していたり、非常に恣意的な、かつマーケティングベースのものです。
我々がつくっているLA LISTE(ラ・リスト)は世界中のレストランレビューをデータとして蓄積し、独自のアルゴリズムによりランキングを決定しています。つまりその結果には誰の意思も介在していないし、経済活動とリンクしていることもありません。世界で一番フェアなレストランランキングだと自負しています。
小山:そのラ・リスト2019を見ますと、今年「青柳」は……世界88位か(笑)。結果はともかく、トップ1000に日本の料理店が140店以上ランクインしていることはうれしいことですね。ほかのどの国よりも多い店数です。
フォール:いま、日本食は世界的にブームを迎えていますからね。
小山:私からするとようやく来たな、という感じ。私は1992年からパリの名門調理師学校フェランディにて日本料理を指導しており、多くのシェフたちが日本料理のすばらしさを実感してくれています。包丁の使い方ひとつで刺身の味が変わるのは、彼らにとっては信じられない体験なのですよね。
特に2000年にジョエル・ロブション氏と会った際には、私は彼に「21世紀は日本料理の時代になる」と断言したほど。質の高い食材に恵まれ、油脂を使わずにおいしくできる日本料理は、世界に類を見ない料理だといえるでしょう。
フォール:フランス料理がユネスコ無形文化遺産(世界遺産)に登録されたのは10年、和食が同じく登録されたのは13年でした。フランスも日本も私にとっては同じく美食の国。フランス料理が油彩なら、日本料理は水彩といったところかな。それぞれの個性がすばらしい。
小山:私からすれば日本はまだまだフランスの域には達していないなぁ。というのは、フランスを旅する人の多くはフランス料理を楽しみに訪れますが、日本における日本料理はまだまだほかのコンテンツに引けをとっていると感じています。