テクノロジー

2019.12.17 07:30

AIによるファンド運用、その現状と将来


エキュボットのソフトウェアは2018年、ある銘柄が話題になっていることを拾い上げた。アイルランドの医薬品メーカー「アマリン(Amarin)」だ。医者が処方する、オメガ3脂肪酸を使ったダイエット用サプリメントを販売している同社は、国際ETFではずっと3ドルを切っていたが、2018年に同社開発薬に関する有望なデータが明らかになると、株価は一気に15ドルまで急騰した。

ほかの動きとしては、いくつかのチェーン店の決算発表から広がる波紋をエキュボットのシステムが計測し、クレジットカードのボリューム増へとつながるのを推測して、Visaを米国ETFに追加したことが挙げられる。

コンピューターにも、欠点はある。データストレージ企業「ネットアップ(NetApp)」とパフォーマンス解析サービス「ニューレリック(New Relic)」に飛びついてしまったのはおそらく、クラウドコンピューティング業界が相次いで熱狂したのに反応したためだ。両社とも株価は急落した。とはいえ、心配は無用だとカチュアは言う。ニューラルネットワークは過ちから学習するのだ。

エキュボットが運用しているのは1億2000万ドルにすぎず、同社が成功できるかを判断するにはまだ時期尚早だ。これまでのところ、同社の米国ファンドはS&P500に年率で3ポイントの後れを取っているが、国際ファンドについては、S&P500指標を6ポイント上回っている。

エキュボットは、同社のファンドはAIをアクティブに活用して管理されるETFとしては唯一のものだと主張しているが、同社の独占状態は長くは続かないだろう。IBMは、ウォール街のあちこちでAIを売り込んでいる。ニューヨーク州ヨークタウン・ハイツにあるIBMトーマス・J・ワトソン研究所の科学者ドナ・ディレンバーガー(Donna Dillenberger)は、数百万のノードを持つ株式市場モデルを開発しており、ノード数が10億台のシステム完成も間近だと話す。

人間のアナリストたちも、エキュボットにとって大きな脅威だ。彼らは、エキュボットのシステムに仕事を奪われようとしている一方で、アマゾンのクラウドセンターでは対応できないような臨床試験や通知を追跡することができる。

エキュボットにとって有利な点は、デジタル化されたデータが爆発的に増えており、チップの性能も進化していることだ。人間の脳では、その結合の速さに追いつけない。

「現在存在するデータの90%は、ここ2年間で誕生した」と、エキュボットの最高執行責任者(COO)アーサー・アマドールは指摘する。「2年後でも、こうした状況は変わらないだろう」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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