自動運転ウェイモが買収した英企業、Latent Logicの「模倣学習」の力

IAA2019フランクフルトオートショーで話すウェイモCEOのJohn Krafcik(Photo by Sean Gallup/Getty Images)

自動運転タクシーを開発中のグーグル系企業の「ウェイモ(Waymo)」は、仮想空間でも1万台の車両を連日走行させ、コンピュータ上のシミュレーション走行距離は100億マイルを超えているという。

ウェイモは新たな企業買収により、人間の行動シミュレーションをさらに拡大しようとしている。同社はオックスフォード大学からスピンアウトしたスタートアップ企業「Latent Logic」を買収したと発表した。Latent Logicは自動運転車のトレーニングを行う、「イミテーション・ラーニング(模倣学習)」と呼ばれるシステムを開発した。

2017年に、オックスフォード大学教授でマシンラーニングの研究部門Whiteson Research Lab(WhiRL)を率いるShimon Whitesonが設立したLatent Logicは、自動運転車のトレーニングシステムを開発する企業だ。

この分野では強化学習(reinforcement learning)モデルを自動運転車のトレーニングに用いる企業が数社あるが、Latent Logicは模倣学習のモデルを採用している。

強化学習モデルにおいては、エンジニアがシステムの判断をチェックし、完成度を高めていく。しかし、強化学習の欠点は複雑な状況において、システムがより人間らしい行動をとることを促進するよりも、リワードを最大化させることにある。Latent Logicのシステムはカメラが取得した動画データを活用し、より現実に即した道路上の人間の行動シミュレーションを行い、ポリシーの策定を行う。

人間の行動を模倣することで、Latent Logicは完璧な行動ではなく、現実に即した行動を促すのだ。Latent Logicの専門的知見とテクノロジーを活用するウェイモは、現実空間で600台の自動運転車が蓄えた100万マイル以上の走行データを、より良い形で利用し、シミュレーション環境を拡大できる。

今回の買収にウェイモが支払った金額は明かされていない。Latent Logicは今後もオックスフォード大学の1部門としてオペレーションを続け、ウェイモにとって初めての欧州でのエンジニアリングのハブとなる。

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事