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AI通信「こんなとこにも人工知能」

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ディープラーニングなど人工知能(AI)技術を使って、まるで本人が登場して話しているかのような動画を生成する「ディープフェイク」が、世界中で深刻な問題として認識され始めている。

というのも、ポルノ動画などによるプライバシーおよび肖像権侵害もさることながら、SNSや動画コンテンツが人々の意識に大きな影響を与える世の中においては、企業の株価の浮き沈み、もしくは選挙結果を左右しかねないほどの波及力を持つ可能性を否定できないからだ。

GAFA筆頭に「技術」で対抗

現在、世界各国ではディープフェイクに対抗するために、ふたつの観点から議論が進められている。まずひとつは、技術による克服だ。

最近、フェイスブックが1000万ドルを投じ、ディープフェイクを探知する技術を開発し始めたというニュースは記憶に新しい。その最初の動きとして、有名俳優や政治家、インフルエンサーなどの映像イメージ10万点を収集。流布した映像を見破るためのデータ確保に乗り出しているという。

グーグルも自社で開発しているText-to-Speech技術を利用し、映像のなかの発言者の言葉が本人のものなのか、認証・特定する技術を開発中だ。その他にも、アドビやツイッター、マイクロソフト、アマゾンなど各社が、ディープフェイクコンテンツを削除する技術の開発もしくは支援、摘発時の削除方針強化などに乗り出している。

「法律」の整備は中国が先行

ディープフェイクを制圧するもうひとつの方法として議論の的となっているのは「法律」である。この分野で最もラディカルな決定を行っているのは中国政府だ。

中国では2020年1月から、人工知能を使って映像や音声を制作した際、その旨を明らかにすることを義務付けるとしている。仮に事実を隠ぺいした場合、刑事処罰の対象になる。なお中国サイバー空間庁は、公式サイトで以下のようにディープフェイクを敵視する声明を発表している。

「ディープフェイクのような新しい技術が導入されることは、社会秩序を破壊し、人々の利益を侵害するだけでなく、政治的な脅威要因になる可能性があり、国家安保や社会安定性に否定的な影響をおよぼすことになる」

米国では、連邦政府が1年6カ月毎にディープフェイク映像の状況を調査・発表することを決定し、一部の州では関連法で罰則を強化する動きも現れている。また、韓国ではパク・テチュル国会議員が「ディープフェイク法」の発議を行った。パク氏は発議前にディープフェイクを作成する実験を行っており「10ドルあれば十分に作れる」とその脅威について改めて強調し法案の成立を促している。

調べてみた限り、日本ではまだ関連法案についての検討が行われていないのが現状だ。ダークサイドの使い方を根絶する正しい規制は、産業全体の原動力にもなる。各国の動向と歩調を合わせていくのか、もしくは独自の解決策を模索していくのか。いずれにせよ、産業関係者の声を反映した規制の在り方が定まっていくことを願いたい。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河鐘基

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