World Restaurant Awards審査員

「ザ・レヴェリー サイゴン」の管理業務を司るWMCグループ副社長、ジェームス・ヨン

「人々はベトナムというと、ベトナム戦争のイメージをまず思い浮かべる。だけれども、今のベトナムはまったく違います」

ベトナム南部のホーチミン。ブルーを基調としたエレガントなカフェのカウンター席で、ラグジュアリーホテル、「ザ・レヴェリー サイゴン」の管理業務を司るWMCグループ副社長、ジェームス・ヨンは、イギリス人らしい、ゆったりとした静かな口調で語り始めた。

ホテルから徒歩3分ほどのこのカフェ「Brodard(ブロダード)」もWMCグループが、老舗ブランドを買い取る形で、新しく、パリの3ツ星レストラン「ル ・サンク」の元ヘッドパティシエを雇いリニューアルオープンしたばかりだ。

目の前に置かれた焼きたてのマドレーヌもホットチョコレートも、フランスと変わらない上質なものだ。窓の外には、ドンコイ通り名物の靴磨きの男性と、バイクの後部座席を改造した移動式コーヒースタンドという昔ながらの光景が見られるのが、いま自分がベトナムにいるのだということを気づかせてくれる。

豊かさに見合った文化を創出

社会主義国でありながら、ドイモイ政策の影響で経済成長を続けるベトナム。2018年の実質GDP成長率は7%を超え、人口約9467万人を擁する国は、将来性豊かな消費市場としても注目されている。首都ハノイが政治機能の中心を司る一方で、ベトナム最大の都市として、経済の中心を担うのがホーチミンだ。

そして、そのホーチミンに、不動産業を営むオーナーがオープンしたのが、極上のホテル「ザ・レヴェリー サイゴン」だ。ロゴマークは孔雀。ベトナムでは縁起の良い鳥として知られるが、それだけでなく、ベトナムは、孔雀が羽を広げるように世界を驚かせるラグジュアリーを提供できると、ベトナムの誇りを持ってつくられた地元資本のホテルだ。



筆者が滞在した高層階の角部屋からはサイゴン川が一望でき、部屋には、耐久性を重視したホテル仕様のものではなく、邸宅などに使われる繊細で上質な家具が並ぶ。その理由は「投資」だ。

それは、このホテルへの投資、という意味ではなく、ヨンによれば、ベトナムの人への投資と考えているのだという。最高級のものを扱う、楽しむ文化をベトナムにつくっていく。急成長を続けるベトナムに、豊かさに見合った文化を創出する、その第一歩として、世界の素晴らしいものを知ることが大切だと考えているからだ。

それと同時に、スタッフたちも、このホテルで、一流のサービスとは何か、また一流のものを扱うことで新しい文化をつくっていこうとしている。ロンドン、パリ、マルタ島、ドバイ、アブダビと、世界各地のホテルで働いてきたヨンも、このベトナムの将来性に魅力を感じ、ベトナムにやってきた1人だ。

「ベトナムの人はとても勤勉で、一流のものを学びたいという意欲にあふれている。そこに、成長の可能性を感じるのです」

文・写真=仲山今日子

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