米国の音楽チャートを根底から変えた「ストリーミング」の力

マライア・キャリー(Photo by Ethan Miller/Getty Images)

マライア・キャリー(Photo by Ethan Miller/Getty Images)

マライア・キャリーの1994年の大ヒット曲「恋人たちのクリスマス(All I Want For Christmas Is You)」が今年も米ビルボードの上位に返り咲いたことは、既にお伝えしたが、25年も前にリリースされたこの曲が年末のチャートの頂点に立つ可能性が高まった。

背景には、米国の音楽業界のチャート集計方法の劇的な変化がある。音楽ファンがお気に入りの楽曲を聴く主要なプラットフォームは今や、スポティファイやアップルミュージック、パンドラなどのストリーミングサービスになった。

ニールセンやビルボードが発表するランキングを決定づけるのは、ラジオでの人気やCDの売上枚数ではなく、ストリーミング企業が集計した再生回数になった。

つまり、ストリーミングがゲームの流れを根本から変えたのだ。「恋人たちのクリスマス」の再ブームはデジタル時代が作り上げた。かつての音楽チャートを左右したのは、ラジオ局に寄せられたリクエストの件数や、iTunesでのダウンロード件数だった。しかし、近年ではストリーミングの再生回数が主要な指標となった。

人々がスポティファイでマライア・キャリーのクリスマスソングを再生したり、プレイリストに追加するごとに、この曲はチャート上位に駆け上がっていく。「恋人たちのクリスマス」はここ数年、年末シーズンを迎える度にチャートに復活し、さらに驚くべきことに、毎年順位をあげているのだ。

この曲のリバイバルが始まったのは2012年のことだった。ビルボードはその年にチャートの集計方法を変え、Hot 100のデータに有料ストリーミングの再生回数を加算するようになった。「恋人たちのクリスマス」は2012年の年末に21位に上昇し、2017年にはトップ10圏内に入った。さらに、2018年は最高3位を記録した。

年末恒例となったマライア・キャリーの帰還は、今年は例年より早く始まった。「恋人たちのクリスマス」は12月2日現在、米国チャートで31位に君臨しているが、クリスマスまでにはまだ数週間があり、人気はさらに高まる見通しだ。

米国人にとってこの曲は、好むと好まざるとにかかわらず、年末を象徴する楽曲になった。ラジオ局やストリーミングのプラットフォームがクリスマスソングをセレクトする際に、この曲は欠かせないものと言える。

「恋人たちのクリスマス」は昨年、最高位3位を記録したが、今年はその記録を上回り、1位に立つ可能性も十分ある。マライア・キャリーは今年、彼女の歌手人生で19回目のビルボードHot 100の首位を、25年前の楽曲で獲得することになるかもしれない。

編集=上田裕資

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