NYTは新疆ウイグル自治区の少数民族であるウイグル族が強制収容され、「過激思想のウィルスを除去するための再教育」を施されていると報じた。さらに、11月24日には国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、住民への監視や管理の実態を示す中国当局の内部文書を入手し、公開した。そこではAIシステムを使って「疑わしい人物」を探しだし、1万人以上を施設に送ったことなどが記されていた。
この文書は中国政府の「一体化統合作戦プラットフォーム(IJOP)」と呼ばれる監視システムの運用について記述したものだ。国際人権団体ヒューマンライツ・ウォッチはこのシステムがAIベースの監視カメラによる顔認証や、WiFiの傍受、各家庭へのスパイウェアのインストールなどを通じた監視を行い「疑わしい人物」を探し出していると指摘した。
ここから得られた情報はモバイルアプリ経由で警察が利用しているという。2017年にリークされた文書によると、約2万4000人が不審者とされ、その大半が勾留されたとされた。
しかし、ロンドンの在英中国大使館のLiu Xiaoming大使は「これらのリーク情報とされるものは、全てでっちあげだ」と否定した。さらに、Xiaoming大使は強制収容所や監視システムの存在自体は認めたものの、その背景には数千名に及ぶテロリストの脅威があり、1990年から2016年にかけて新疆ウイグル自治区では、数千件のテロ事件が発生したと述べた。
「仮に同じ事態が英国で発生し、人々に危害が及んだとしたら、あなた方はどのように対応する? 黙って見ているだけか?」と、彼は問いかけた。
Xiaoming大使の発言は意図的な挑発といえる。現代の中国ほどの規模で、国民の監視システムを構築した国は存在しないものの、英国は他の欧米先進国を上回るレベルの市民の監視を行っている。欧州人権裁判所は昨年9月、英国の諜報機関GCHQが実施した監視活動が欧州人権条約に違反するとの判断を示した。
元NSA職員のエドワード・スノーデンは、英国のGCHQが一般市民のプライベートな会話を盗聴し、米国のNSAを含む他国の諜報機関と共有していると主張している。