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 NASAは拡張現実を宇宙に持ち込むために、軍事技術を扱う企業、オスターハウト・デザイングループ(ODG)と手を組んでいる。アメリカ航空宇宙局は、宇宙飛行士の視界にデジタル情報をオーバーレイできるスマートグラスの開発を進めているのだ。

 ODGのグラスにはクアルコムのSnapdragonプロセッサー、WiFi、Bluetooth、そしてユーザーがどこを見ているか感知するセンサーが搭載されている。ODGのグラスはこれまで様々な米軍の機関で使われてきたが、同社は今年の国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」で消費者向け製品も売り出すと発表した。同社のスマートグラスは軍事仕様で作られているため頑丈だ。

 サンフランシスコに本社を置くODGはベンチャーキャピタルの後ろ盾はないが、その開発のために過去6年間で6千万ドルをこのグラスの開発に注いできた。

 NASAは、このスマートグラスの採用により、宇宙飛行士のミッションの管理がずっと楽になると見込んでいる。飛行士の眼前に情報を送り込むことで、シャトル内の保守・修理業務は非常に効率化できる。書類の束を持ち歩く必要が無く、両手を自由に使えるようになるのだ。さらに、飛行士に地上からライブビデオのフィードバックを送り、音声や映像で指示を与えることも可能だ。

 これにより飛行士がミッションに向けて訓練に費やす膨大な時間を短縮できる可能性がある。「驚異的な額の費用を節約できるかもしれない」とジョンソン宇宙センターのショーン・カーター氏は言う。「これは有人宇宙探査に大変革をもたらすツールになる」

 カーターの話では、NASAは10年ほど前から拡張現実を研究している。しかし、これまで同宇宙局の専門は主にソフトウェアの分野だった。NASAとODGはこのソフトウェアが最終的にどのような形をとるのかを共同研究していく。NASAはハードの面でより優れた技術を持つ企業と、コラボする必要性を感じていた。

 NASAは今年、ODGのスマートグラスをまず、メキシコ湾の海底訓練施設で試す予定だ。地球での試験をクリアすれば、次は宇宙飛行士と共に国際宇宙ステーションに送り込む。将来的には小惑星や火星に有人着陸する予定の宇宙船「オリオン」の船内で、飛行士を支援するために使用する計画である。

 NASAとODGの提携はNASAのパートナーシップ開発室が一年前、民間企業に拡張現実技術の提案を求めたときに始まった。同開発室の任務は将来のNASA宇宙ミッションに必要なテクノロジーを外部から見つけることだ。こうして寄せられた数多くの提案の中にODGがあった。

 数年前、グーグルがグーグルグラスを発表した時、NASAはこの「グラス」が宇宙探査に利用できないか、グーグルに打診したが、当時のプロジェクト責任者ババク・パービズ(元グーグル X役員で、現在アマゾンに在籍)にはあっさりと断られた。

 理由は極めてシンプルだった。当時、グーグルは消費者市場のみをターゲットにしているとのことだった。その後、グーグルグラスのプライバシー侵害問題が論争の的となり、グーグルが散々な目に合ったのは周知の通りだ。その後、グーグルグラスのプロジェクトはキャンセルとなり、同社にとってかなり苦い教訓を残した。

 NASAは最近、マイクロソフト独自の拡張現実メガネ、ホロレンズ(HoloLens)とのパートナーシップを発表した。ただし、マイクロソフトの役割は、火星探査機キュリオシティーの、地球からの遠隔操作が中心になるようだ。ODGは宇宙事業において、マイクロソフトに先行している形だ。

編集=上田裕資

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