2017年には文部科学省が国内の産業界、教育研究機関について「積極的にオープンイノベーションを導入する必要がある」(平成29年版科学技術白書より)と示している。
行政におけるオープンイノベーションは、外部連携で進められるケースが生まれている。大阪市、仙台市などで事例が創出されているが、なかでも精力的なのは、シリコンバレーの有力なベンチャーキャピタルの500startupsとの連携や、Urban Innovation KOBEといったプロジェクトでを推進している神戸市だ。
なぜ神戸市は数々の事例を生み出せるのか。動機や背景について伺うため、神戸市役所を訪ねた。
潤滑油としての「つなぐ課」
長井伸晃さん(写真=齋藤潤一)
神戸市役所には、約2万人の職員がいる。その組織は、これまで法令・機能を重視した縦割りになっており、職員は同じ役所の仲間であるにも関わらず、「~課さん」と他人行儀に呼ぶ人もいたらしい。その縦割りを解消し、神戸市の政策の圧倒的なパワーアップを図り、市民に届けることを目的に市長が創設したのが「つなぐ課」である。
つなぐ課が取り組んでいる主な課題は、ひきこもり支援や空き家・空き地対策などといった全国的にも社会課題となっているテーマから、新たなテクノロジーやカルチャーを取り入れた地域活性化までと多岐にわたる。
それを受けて、オープンでフラットな組織にしようと活動しているのが、神戸市役所の長井伸晃さんだ。長井さんは、生活保護や人事給与の担当業務を経験した後、ITによるイノベーションを推進するポジションに就き、様々な企業との連携を果たし、『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2019』も受賞している。つなぐ課が創設されると知り、自分もその取り組みにチャレンジしたいと手を挙げたという。