テクノロジー

2019.11.03 11:30

日産リーフの試作車に見る次世代クロスオーバーEVの正体

日産 リーフe+のプロトタイプ

日産 リーフe+のプロトタイプ

先日、東京モーターショー会場で、日産が次世代クロスオーバーEVコンセプト「ARIYA」を発表した。一見、同車はエッジの効いた流線型のありがちなコンセプトに見えたが、どうやら僕はその数日後、気づかないうちに、その「正体」に乗ったようだ。
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というのは、今週、日産が追浜試験場のテストコースで乗せてくれたリーフe+のプロトタイプには、同社の次世代の新技術が搭載されていた。これがもしかして、ARIYAの正体かもしれない。

テスト車は、リーフe+をベースとしており、既存の前輪のモーターの他、後輪に新しく2つめのモーターを追加した。つまり、2基の高出力モーターで4WD化し、独自の電動化技術、シャシー制御技術を組み合わせることによって、全く新しい電動駆動の4輪制御を実現している。

後輪にもモーターが加わったということで、リヤのサスペンションの構造も進化。そのパワーは最大308psで、最大トルクは680Nm、リーフe+のほぼ倍という出力に当たる。それはどのぐらい速くなっているのか? 時速0−100km/hまでの加速の比較をすると、その差が明らかだ。ベースのリーフe+の6秒台に対して、パワーアップしたリーフのプロトタイプは、5秒台。
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同一車のタイムラップス写真。右は4WD制御技術がONの時で、イン側のブレーキ力によってラインをトレースし、アンダーステアを抑えた。左はOFF時で、アンダーが出ている。

2基のモーターを繊細にコントロールすることで、車体の揺動を抑える制御を行う。ここで忘れてならないのは、リーフe+には、e-pedalがついていること。e-pedalはもちろんアクセルではあるが、精密にいうと、踏めば加速するし、足を緩めば、まるでにブレーキを踏んでいるかのように自動的に減速する。今回のe-pedalは、さらに進化した。

例えば、市街地走行における減速時などでは、通常のフロントモーターの回生ブレーキに加え、リヤモーターの回生ブレーキも併せて活用することで車体の姿勢変化を抑制する。急なアクセルペダルOFFによる減速から生まれるイヤな前後の揺れを「ピッチング」と言うが、リヤモーターの追加のおかげで、乗員の前後方向の揺れを減少させる。前のめりにならないようにすることによって、クルマ酔いを防ぐ効果もある。

また、独自の電動化技術や4WD化によって、コーナリング安定性がかなり進化した。滑りやすい濡れた路面や雪道でのコーナリング中に、イン側の繊細なモーター制御によって自動的に適度にブレーキ力をかけ、コーナーのラインが保たれるようにアンダーステアを最小限に抑える。たとえば左に曲がると、コーナリング中に遠心力でクルマが外側に引っ張られないように、左側のホイール自体が細かく断続的にブレーキをかけて安全性を保つ。


試乗用に特別に用意された画面。車両が外側に引っ張られるのを抑制するために、内側のホイールに制動がかかっているのが赤く示されている。

今回のテストでは、その新しい4WD制御技術のONとOFF状態をスイッチを押すだけで、違いが体験できた。まずは、OFF状態。30km/hで濡れた路面のコーナーに入ってそのまま60km/hまで加速すると、徐々に車両の外側に引っ張られる姿勢を見せる。

しかし、ONにすると、同じ条件でコーナーに入った場合、4WDシステムが前後のトルク配分バランスを見事にコントロールし、しかも適度にイン側のブレーキ力をかけることによって、綺麗にラインをトレースしながら、アンダーステアを抑えた。

日産によると、このテストカーに搭載されている新技術は、確かに近い将来、もしかしたら、来年末ぐらいにはARIYAのようなクロスオーバーEVに登場するかもしれないとのことだ。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

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