最近、彼が、自らが設立したAoki財団を通して、全米でも権威あるブレインリサーチ研究所兼病院の「ルー・ルーボ脳センター」に寄付するため、チャリティー・ゲームイベントを当地で開催し、大きな話題となった。
「Aokiゲーム」と名づけられたイベントは、スティーヴのチャリティーとあって地元のたくさんのセレブリティーが集まり、アイスホッケーのメジャーリーグの協賛も得て、2500万円もの募金を稼ぎ出し、大成功のうちに終わった。
スティーヴのこの財団は、脳の病気や障害を予防する科学を支援するという主旨でつくられ、基本的には彼の活動やコンサート収益から、脳研究者に研究助成金を提供するというものだ。
父親から受け継ぐチャレンジ精神
なぜ、世界的なDJと脳科学なのか? スティーヴ・アオキは年間250本のツアーで世界中を飛び回り、移動時間を含めると300日も家を空ける。自宅に居られるのは50日しかないということに対して、インタビューでスティーヴは「だから脳みその研究が必要なんだ」と語る。
自分の脳を正しくコントロールしておかないと、300日も旅に出ていたら倒れてしまう。しかし、「旅こそが自分の家なのだ」と脳に思わせることによってストレスがなくなり、滞りなくツアーを完遂できるという。そして、テレビカメラの前で「すべてはここから始まる」と自分の頭を指差すのだ。
実際、スティーブが毎日3〜4時間しか睡眠をとっていないことはよく知られており、常にいわゆるハイな気分のまま観客と同期し、元気を他人に与え、明日の希望を分かち合う。そのステージは、彼のライフスタイルそのものだ。
そして、そのことが彼を脳研究へと向かわせたらしく、DJをやってステージの上で踊りながら、巨大なケーキを観客に向かって投げつけて盛り上がるというスティーヴ独自のパフォーマンスも、一連の脳の探求から発想されたものだという。
スティーヴ・アオキの父親は言わずと知れたロッキー青木である。ロッキーは26歳の時、鉄板焼きレストラン「ベニハナ」をニューヨークで開業。今でも全米に約100店舗のチェーンが展開され、ラスベガスにもザ・ストリップに面した超一等地に店がある。
それだけでなく、ロッキーは、パワーボート、気球での冒険、プロのバックギャモンプレーヤーとさまざまな分野で第一人者として活躍、2008年にこの世を去ったが、そのチャレンジング・スピリットは、そのまま息子であるスティーヴに受け継がれている。