父親からの経済的支援はない
スティーヴ・アオキはフロリダで生まれて、カリフォルニアで育ったが、自分のDJショーをラスベガスでやったことがきっかけで、この地に豪邸を建てて、そこにはまるで宇宙船のコントロールルームのようなエンターテインメントルームをつくり、ツアーに出ていない時でも、常に音楽と向き合っている。
スティーヴは常日頃から、「元気になるのにドラッグなんか要らない。いい音楽さえあればいつも元気でいられる」と豪語している。
彼が今回イベントを開催して寄付をしたルー・ルーボ脳センターは、ワインで大成功をしたカリフォルニア州の実業家ルー・ルーボが、認知症によって苛酷な晩年を送ったことから設立され、アルツハイマーの予防研究で知られている。
このようなスティーヴの慈善活動は、当地でも彼のDJ以上によく知られており、クラブや野外フェスなどにも無縁な、彼をよく知らない高齢の世代にも高く評価されている。
全米に鉄板焼チェーンを築いて大富豪でもあった父親のロッキー青木は、前述のように、2008年に癌で亡くなったが、スティーヴ・アオキは、CNNのトーク番組「ラリー・キング・ライブ」に出演して、「父親からはいっさい経済的支援を受けていない」と語っている。
子供には独立心を植え付け、そこには妥協しないという父親のおかげで、今の自分があると感謝を述べ、成功したいと思って力を尽くした最大の理由は、父親に、自分で金を稼げるようになったというところを見せたかったからだと語っている。
「児孫(じそん)のために美田を買わず」とは西郷隆盛の言葉だが、子孫に財産を残すと努力しなくなるので、ためにならないという意味で、まさにそのままロッキーとスティーヴの親子関係にも当てはまる。そして、それがまた惜しみないスティーヴの慈善活動にも結びついているのかもしれない。
いずれにしても、筆者の住むラスベガスでは、スティーヴ・アオキは常にその動向が注目される重要人物であることに間違いはない。
連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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