ビジネス

2019.10.20 10:00

強まるプラスチックへの逆風 石油メジャーにはさらなる打撃に


一つの方法は、リサイクル資材の活用を増やすことだ。BASF、インドラマ、イーストマン・ケミカル、ライオンデルバセルなどの企業はプラスチックのリサイクル企業を立ち上げたり、こうした企業とパートナーを組んだり買収したりしてきたとMSCIは指摘している。こうした企業の一部は、プラスチック廃棄物を変換、あるいは分解して基本的なモノマーや中間の構成要素にし、化学製品を作るための代替原材料として使用することを目指している。

この市場は成長することが期待されている。それはリサイクルによりエネルギーと資源の使用量が減るからだけではない。同報告書では、コルゲート・パルモリーブやダノン、ディアジオ、ロレアル、ペプシコ、タッパーウェア、ユニリーバなど包装品企業は、2025年までに消費者使用後のリサイクル資材を包装材の少なくとも25%に使用すると約束している。現在、このようなリサイクルはほぼ全く行われていない。

また同時に、アムコールやシールドエアーなどのプラスチック包装企業も同年までに、全ての包装製品を完全にリサイクル可能なもの、あるいは再使用可能なものにすることを誓っている。

生分解性プラスチックも有力な代替策に

石油・ガスグループの売り上げを減少させる可能性があるもう一つの要素は、とうもろこしなどの資材から作った完全生分解性プラスチックなど、代替的な解決策の開発だ。バイオプラスチックには、森林伐採や、食品生産に使うべき土地の転用などのリスクに加え、従来型のプラスチックリサイクルの流れの汚染の問題があるが、生分解性が増せば石油・ガスの需要低下に貢献するかもしれない。

また一方で、プラスチックから完全に離れて紙を基盤とした包装などの代替策に移る動きもある。

プラスチックからの移行をけん引しているのは消費者と規制機関だけではない。投資家も重要な役割を果たしている。多くの投資家は自分が出すプラスチックごみの量を減らすことを誓うだけでなく、プラスチック代替製品への投資を始めている。

同報告書では、「BMOグローバルやBNPパリバ、エルメスEOS、サラシン・アンド・パートナーズなど、合わせて4兆2000億ドル(約460兆円)の運用資産がある26の金融機関がこれまで、エレン・マッカーサー財団の「New Plastics Economy(新プラスチック経済)」の取り組みを支援してきた」と述べている。

MSCIは「多くの石油・ガス製造企業は、継続的な拡大の手段としてプラスチックに目を向けてきた。しかし当社の分析からは、この移行により企業にもたらされるのは一時的な猶予でしかないかもしれないことが示唆されている」と結論づけている。

翻訳・編集=出田静

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