ビジネス

2019.10.09 07:00

スモール・ジャイアンツのまち、八尾市を支える「変態な行政マン」


八尾のものづくりを世界に発信

2018年8月、松尾は、市内の経営者たちが交流して、事業内容やアイデアを緩やかに共有する場所として、駅近の利便性の高い施設で「みせるばやお」を立ち上げる。「みせるばやお」とは「魅せる場、八尾」という意味で、「ものづくりのまち」である八尾を広く知ってもらおうと、子供たちにものづくりの楽しさを伝えるワークショップや、企業間の交流を促進するためのイベントなども行われている。

「みせるばやお」は、施設の使用料を市役所が負担し、運営費は参画した企業からの会費で賄っている。最初の会員企業は35社に過ぎなかったが、現在は110社に増え、施設への来場者数も3万8000人を超えている。また、立ち上げた当初から、3年間で88の企業間のコラボレーションを創出することを目的としており、現在44件の新商品開発や業務提携のコラボレーションが生まれているという。まさに八尾市を活性化させる前線基地ともなっているのだ。

「『みせるばやお』のナレッジシェアモデルは、他の地域でも活かせる仕組みだと考えています。同じように地方創生を本気で考えている地域のみなさんの参考になるように、リファレンスモデルとしてこの取り組みが発展し続け、見本となれるように頑張っていきたいと思っています」

ちなみに、松尾は、2019年の「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」にも選ばれたばかりだ。

いま、松尾は次の新規プロジェクトである「YAOYA PROJECT」(デザインイノベーション推進事業)を、八尾のものづくりを世界に発信する事業として、展開しようとしている。

「まず八尾のスモール・ジャイアンツのものづくりのすごさを、海外も含めたクリエイターたちの協力(英語圏、中国、日本で募集する予定)を得て、世界へと発信することを考えています。長期的には、『みせるばやお』で培った人脈や地域企業のつながりの中で生まれている新商品や製品やサービス開発をプロジェクトとして発信し、地域以外の企業とのコラボの加速、地域外での活動展開も、個人的にですが考えています」

そんな壮大な夢を持つ松尾を、木村石鹸工業の木村だけでなく、地元の人たちも「変態な行政マン」と呼ぶことについて、自身は無邪気にこう語る。

「その呼び方は率直にうれしいですね。実は、〝変態″を良い意味でとらえていて、常に柔軟な姿勢で世の中の変化やトレンドに対応できる力、〝変態力″とも私は言っています。昆虫とかの変態って意味です。スティーブ・ジョブズも『自分なら世界を変えることができる。そんなことを本気で信じた人たちが、この世界を変えてきたのだ』って言っていたように、信じてやりきることが大切だと思っています」

ちなみに、前出の木村は自らのSNSで次のように松尾のことを発信している。「松尾さんが八尾市にいる。それだけで八尾に立地している企業はアドバンテージだ」。その言葉に松尾は、感動して涙が出たという。

八尾市のスモール・ジャイアンツが連携して、世界へと発信していく日は、案外、近いかもしれない。


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取材・文=フォーブス ジャパン編集部

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