1人当たりのプラスチックごみ廃棄量 上位国はカリブ海諸島に

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UNEPの広範カリブ海地域の2006~12年にわたる海洋清掃データからは、約3700キロメートルを網羅する沿岸・水中から合わせて399万120点のプラスチックごみが回収されたことが分かっている。カリブ海から1年に約4000億ドル(約43兆円)以上の収入を得ている同地域で毎年約820万トンのプラスチックごみが海に捨てられていることは、深刻かつ危険な問題だ。

ナショナル・ジオグラフィック誌は「カリブ海の約50億ドル(約5300億円)の貿易、約20万の直接雇用、約10万の付随的なサービス、沿岸の約4000万人の住民の食糧安保、約20億ドル(約2100億円)以上のダイビング観光事業が危機にさらされている」と述べている。

カリブ海地域の14カ国は、使い捨てビニール袋や発泡スチレンの使用を禁止し、市民教育プログラムを導入することでこの脅威に対する取り組みを始めている。

さらに、再使用や別目的での利用を通したプラスチックごみの革新的な管理方法も多く生まれてきた。ヒューレット・パッカードは2017年より、ハイチで集めた約450トン以上のペットボトルからインクカートリッジを製造してきた。また、パーリー・フォー・ザ・オーシャンズは沿岸の水域を清掃し、海洋プラスチックごみを「パーリー・オーシャン・プラスチック」と呼ばれる繊維に変え、服やかばん、靴などのファッションアイテムに活用してきた。

しかし、本当に大きな変化が感じられるようになるのは、ごみ取集やリサイクルセンター、安全な埋め立て地などの廃棄物管理・インフラが向上したときだ。環境団体The Ocean Cleanupが発表した調査によると、こうしたシステムが一定の水準に達しなければ、処理を誤ったプラスチックごみの年間量は2060年までに3倍になる可能性がある。

プラスチック汚染の増加は、カリブ海地域に不釣り合いなほど大きな影響をもたらすだろう。海に依存し、ごみ管理のシステムが不十分な経済を持つ沿岸の小さなコミュニティーは、より大きな工業国と比べてプラスチックごみの影響をはるかに受けやすいからだ。

絶対量に基づく世界的な比較はあまりにも安易だ。国ごとのプラスチックごみの総量を比較することで、世界的な不平等の仕組みが隠され、小さく“取るに足りない”ように見える沿岸コミュニティーの脆弱(ぜいじゃく)性が見逃されてしまう。私たちはそれぞれの国を批判するのではなく、プラスチック汚染を恒久化させ、一部の人をさらに脆弱にするような不平等の仕組みを解体しなければならない。

原因と影響、解決策に焦点を当て、カリブ海地域の1人当たりのプラスチックごみを分析することは、アジア諸国をただ非難するよりもはるかに啓発的だ。

翻訳・編集=出田静

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