インドの電動スクーター企業「Ather」が目指すエネルギー革命

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「我々は環境保護のために会社を立ち上げた訳でない」と語るのは、インドの電動スクータースタートアップ「Ather Energy」の共同創業者Tarun Mehtaだ。

Mehtaは、2013年に大学の友人のSwapnil JainとAther Energyを設立した。「ガソリンを大量に消費する乗り物をなくす正しい方法は、人々が買いたくなる製品を作ることだ。我々は、電動スクーターこそが未来だと考えている」とMehtaは話す。

Atherをはじめとする電動スクーターメーカーは、インドの2輪車業界に旋風を巻き起こしている。インド自動車製造者協会によると、昨年の2輪車の生産台数は前年比6%増の2450万台に達した。Atherはこれまでに9300万ドル(約10億円)を投資家から調達した。

今年5月には、インドのEコマース最大手「フリップカート」の共同創業者Sachin Bansalが主導したラウンドで5100万ドルを調達し、評価額は4億ドルに達した。このラウンドには、バイクメーカーの「Hero MotoCorp」も参加していた。Hero MotoCorpは、ガソリンエンジンのスクーターではインドのみならず世界最大の販売台数を誇り、今年に入って自社ブランドの電動スクーターをリリースしている。同社はAtherの株式の32%を保有している。

CEOのMehtaとチーフ・テクノロジー・オフィサーのJainが初めて輸送技術に関心を持ったのは、インド工科大学マドラス校でエンジニアリングを学んでいたときだった(現在、マドラスはチェンナイに名称を変更している)。

「我々は、もともとスターリングエンジンの開発を手掛けていた。開発はうまくいかなかったが、我々が追求した哲学は、その後の事業に大きく影響した」とMehtaは話す。スターリングエンジンとは、液体の圧縮と膨張を利用して熱を動力に変えるエンジンだ。

MehtaとJainは2012年に卒業後、エンジニアとなったがすぐに母校の研究室に戻ってバッテリーパックの開発に乗り出した。その研究が電気スクーターの開発につながり、2人は翌年にAtherを設立した。社名は、古代ギリシャで第5元素とされたエーテルに由来し、“最も純粋なエネルギーの形態”を意味するという。
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編集=上田裕資

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