国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

新天皇の新御料車 トヨタ「センチュリー」

世界の王室の御料車や指導者の特別車は、時代の象徴だ。数日前、建国70周年の中国が行ったパレードで、まるで馬車に乗っているかのように同国の紅旗社の特別車両の屋根から上半身だけを出した習近平最高指導者が話題になった。

また、英国のハリー王子がメーガン妃を乗せたジャガーEタイプの電気自動車もまだ記憶に新しい。モナコのアルベール大公は、環境を配慮したハイブリッド仕様のレクサスLS600hロングに乗っている。


結婚式後にジャガーEタイプに乗って出かけるハリー王子とメーガン妃(Getty Images)

実は、新天皇が10月22日の即位パレードでお乗りになる御料車もハイブリッド仕様で、2018年に3代目として登場したトヨタ・センチュリーをコンバーチブルに仕立てた特別仕様だ。世界にたった一台しかない、8000万円をかけて用意されたこのオープンタイプは、アルベール大公が所有する御料車と同様のレクサスLS600hのV8ハイブリッド・エンジンを搭載している。

不思議なことに、習近平が乗る紅旗社の特別車両と、ロシアのプーチン大統領が乗る同国製ジル特別車と同様に、センチュリーは国内専用なので、海外ではほとんど知られていない。だから、今回の即位パレードは日本の最高級車を全世界に紹介する絶好のチャンスだと思う。

日本の新天皇が日本製のセンチュリー・コンバーチブルという御料車にお乗りになるのは、妥当で正しい選択だと思う。というのは、

30年前、平成天皇皇后両陛下が即位礼の時には、ロールスロイス・コーニッシュIIIにお乗りになった。その後、1993年に当時の皇太子同妃両陛下のご成婚の祝賀パレードで乗られたのも、同コーニッシュだった。


ご成婚祝賀パレード(Getty Images)

今回、そのコーニッシュは年式が古く修理が困難ということもあり使用が見送られ、宮内庁は国内で、多くの条件を満たす車を入手する必要があった。例えば、「車列を組む他の車両より車格が高く、サイズも大きい」「後部席にお座りになる天皇皇后両陛下のお姿が沿道などから見えやすい」「安全・環境性能が高い」など。この条件を満たしたのは、センチュリーのみだった。

外国人の僕から見ると一番不思議なのは、1967年に誕生したセンチュリーの外観デザインが、50年以上ほとんと変わっていないことだ。

そこで、トヨタに詳しい同僚に聞いてみると、「デザインがずっと変わらない、いわゆるキープコンセプトであるのは、主に政治家、権力者、指導者、皇室が乗る車両であるゆえ、保守的な成功やリーダーシップを象徴する形として存在してきたから。センチュリーのスタイリングは、トヨタが考えるコンサバなサクセス・ストーリーです」という。なるほど。

ということで、10月22日に新天皇がお乗りになる車両として、センチュリーのオープンタイプは打って付けではないか。環境に優しく、コンサバなデザインで、世界一の信頼性を誇るトヨタが作るセンチュリーを全世界に思い切りアピールした方がいいだろう。



ウィリアム王子がレンジローバーでロンドンの病院にキャサリン妃と赤ちゃんを迎えに行き、英国の王室がジャガー・ランドローバーの御料車をふんだんに使われるのと同様に、日本の皇室も、菊の紋を取り付けたトヨタ・センチュリーのような御料車とより深い関係をお作りになった方が、海外での認識が高まるのではないだろうか?

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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文=ピーター・ライオン

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