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2019.09.28 10:00

アジア初のデカコーン、配車アプリGrabを生んだ35歳女性起業家

(Tan Hooi Ling / Getty Images)

評価額が100億ドル以上に達した未上場のスタートアップ企業をデカコーンと呼ぶが、アジアで最初のデカコーン企業である配車アプリ「グラブ(Grab)」を共同創業した女性起業家が、現在35歳のTan Hooi Lingだ。

Tanはフォーブスアジアが先日発表した、アジアのビジネスをリードする女性リスト「Asia’s Power Business Women」の2019年版に選出された。ハーバード大学でMBAを取得した彼女は2012年にAnthony Tanと共に、シンガポール本拠のグラブを立ち上げ、累計90億ドル以上を調達している。

グラブの調達資金の半分以上は、今年3月にソフトバンク傘下のビジョンファンドが主導した、45億ドルのシリーズHラウンドによるものだ。このラウンドにはアリババやマイクロソフトを含む26社が参加し、同社の評価額は140億ドル(約1.5兆円)とされた。グラブは年内に、さらに20億ドルを調達する計画だ。

グラブのCOOを務めるTanは、同社が運営を行う8カ国336都市での市場シェア拡大に、全力をあげてきた。2018年3月にグラブは、ウーバーの東南アジア事業を数十億ドルで買収した。買収にあたり、ウーバーはグラブの株式の27.5%を取得し、ウーバーCEOのダラ・コスロシャヒがグラブの取締役に就任した。

グラブは東南アジア最大の配車市場であるインドネシアで、60%以上の市場シェアを獲得することになった。ニューヨークのABI Researchによると、同社のシェアは2017年の初めには30%に留まっていた。

エンジニアの父を持つTanは、英国のバース大学で機械工学を学んだ後、製薬大手のイーライリリーのロンドンオフィスに1年間勤務した。その後、母国のマレーシアでコンサルティング企業のマッキンゼーに務めた彼女は、同社のスポンサーでハーバードのMBAコースに進んだ。

2011年にハーバードで出会ったのが、後にグラブを共同創業することになるAnthony Tanだった。グラブの設立当初、彼女はサンフランシスコのセールスフォースに勤務していたが、週末にはクアラルンプールに飛んで、打ち合わせを重ねていたという。

Tanが掲げるグラブの当面の目標は、市場規模250億ドルの配車市場で強固な地盤を築き、5000億ドルとも言われるアジアの決済市場に進出することだ。

シンガポールでは今年、同国初のデジタル銀行向けのライセンスが5社限定で発行されるが、グラブはその1社に加わろうとしている。グラブはフィンテック部門の「グラブ・フィナンシャル・グループ」を設立し、ダウンロード数が1億5000万件を突破した配車アプリのグラブの利用者に、デジタル決済を提供し、金融サービスを提供しようとしている。

2018年にグラブは日本のクレディセゾンと、デジタルレンディングの提供に向けた提携を結んだ。さらに、米国のマスターカードとはプリペイドカード発行に向けたパートナーシップを締結した。今後はフィンテックだけでなく動画配信や旅行予約、ヘルスケア関連などの分野に事業を拡大するプランを、Tanは描いている。

編集=上田裕資

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