ビジネス

2019.09.24

競合サービス同士が手を組んで、資金調達プロジェクトを始めるワケ

(左)ヘイ代表取締役社長の佐藤裕介 (右)BASE代表取締役CEOの鶴岡裕太


昨年12月から「YELL BANK」も開始していますが、このサービスでは基本的にBASEの加盟店しか資金提供の機会を受けられない。決して自分たちが儲けたいわけではなく、CoineyやSTORES.jpの加盟店にも柔軟に資金調達できる手段を提供することで、実現したい世界がより早く実現できる。短期的な視点ではなく、長期的な視点で個人やスモールチームが活躍できる社会にしたいからこそ、競合として競い合うのではなく、一緒にやる。

そしてBASEとストアーズ・ドット・ジェーピーが同じメッセージを発信することで、個人やスモールチームもその社会の実現を信じられるのではないか、と思うんです。


インターネットがあったからこそ、人生が大きく変わったという鶴岡。事業を通じてインターネットの可能性を届けたい、と言う。インタビュー時、佐藤さんがhey立ち上げ時にアロハシャツを着ていたことに「同じタイプの人間だと思っていたのに裏切られたと思った」と語った。

佐藤:個人の力をエンパワーメントしてさらに大きくしていく。また、「ちいさな規模」だったが故に不利になっていた構造を変えていく。そこにインターネットの面白さがあると思っていますし、その可能性を信じて自分はインターネットに人生を賭けて仕事をしているので、目指す世界は鶴岡さんと同じです。

また、鶴岡さんも言っていましたが、マーケットの観点からも僕たちが頑張ればどうにかなる話ではない。現状、インターネットで新しくお商売を始めようとしている人たちの多くは、BASEかSTORES.jpを利用している。

顕在化しているニーズは既にどちらかに流れているわけです。すごく有難いことですが、つまるところ私たちが今以上の成長を実現しようと思うと、もっとインターネットで新しく商売を始める人たちを増やしていく必要があります。目指す世界が同じであれば、その世界を信じて一緒にやった方が将来のユーザーにとって意味があると思い、BASEと一緒になってプロジェクトを始めました。

鶴岡:変化の流れがどんどん早くなっているな、と毎年思います。昔はフォロワー数が数万人規模のインフルエンサーが売れる時代でしたが、今はフォロワー数は関係なく、どれだけ思いを込めて商品を作っているかのストーリー性が大事になっている。その結果、あまり知られていない個人、スモールチームがインターネットで新しく商売を始め、成功する事例が生まれてきているわけです。

例えば、この市場の先駆者でもある「Shopify(ショピファイ)」は2004年に創業していて、十数年もこの市場でサービスを展開していますが、創業時と状況は異なっている。彼らも、ここまで個人、スモールチームが強くなる未来は想像できていなかったと思うんです。
次ページ > 大企業だけが持っている特権をなくしたい

文=新國翔大 人物写真=小田駿一

ForbesBrandVoice

人気記事