インドの月着陸、成功の確率は「37%」と主任博士が宣言

着陸機「ビクラム」から月面上に送り出される探査ローバー「プラギャン」の想像図(Raymond Cassel / Shutterstock.com)

インド宇宙研究機構(ISRO)が7月に打ち上げた無人月探査機「チャンドラヤーン2号」は9月6日の月着陸を目指し、順調に飛行を続けている。探査機は現在、月の周回軌道上にあり、9月2日にはビクラム(Vikram)と名づけられた着陸機を送り出す予定だ。

インドが月面着陸を成功させれば、米国、中国、旧ソ連に続いて4カ国目となる。ヒンディー語で「月への乗り物」を意味するチャンドラヤーン2号が送り出す、着陸機ビクラムは月面から約100キロの地点まで降下した後、米国東部時間の9月6日午後4時10分に着陸態勢に入り、4時25分に月面に着陸する予定だ。

ビクラムは月の南極付近への着陸を目指している。月の極域には、永久影と呼ばれる全く陽が当たらない場所があり、氷が存在する可能性がある。

ISROのチェアマンを務めるKailasavadivoo Sivan博士は「世界中が我々のデータを待っている。月の南極への着陸は史上初のことだ。NASAもこの地域での有人基地の建設プランを明かしている。我々のデータは人類史に残るプログラムに活用されることになる」と先週の記者会見で述べた。

着陸から数時間後には、ビクラムから探査ローバーのプラギャン(Pragyan)が送り出され、月面の探査が始動する。ビクラムは月面の地震や温度などを測定する一方、プラギャンは月面の物質を分析し、撮影を行う。

着陸機のビクラムと探査ローバーのプラギャンの寿命は、地球の14日間に相当する月面での1日間とされている。月面では夜の訪れとともに、温度が急激に低下する。翌朝になっても、ピグラムやプラギャンが動作している可能性もあるが、その確率は定かではない。一方で、ビクラムを送り出した後のチャンドラヤーン2号は最大で1年間、月軌道に残り、月面の観測を続ける。

中国は今年1月3日、月探査機「嫦娥4号」を月の裏側に送り込んだ。中国は2013年に「嫦娥3号」を月の表に軟着陸させており、1973年の旧ソ連のルノホート2号以来初の、月面軟着陸を成功させていた。

今年4月にイスラエルの民間宇宙企業SpaceILも月面に探査機を着陸させようとしたが、直前で通信が途絶え、失敗に終わっていた。

インドの月着陸も成功が保証されている訳ではない。Sivan博士は成功の確率を「37%」としており、半自動制御で行われる着陸の最終プロセスが「恐怖の15分間になる」と述べている。しかし、全てが順調に運べば、インドは人類の歴史に大きな一歩を刻み、月の南極地域への扉が開かれることになる。

編集=上田裕資

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