ビジネス

2019.08.29

相次ぐシェアオフィス事業への参入。なぜ鉄道会社が?

8月から利用可能になった東京駅の「STATION BOOTH」

鉄道事業者のシェアオフィス事業への参入が相次いでいる。JR東日本は7月3日、駅ナカシェアオフィス事業「STATIO WORK」を本格的に開始すると発表。8月1日から、東京駅、新宿駅、立川駅にてブース型シェアオフィス「STATION BOOTH」が利用できるようになっている。

「STATION BOOTH」は、一人用ブースに机、椅子、Wi-Fi、電源・USBコンセント、ディスプレイ、空調などが備え付けられたワークスペース。専用のウェブサイトから会員登録し、ブースを予約。予約時間に、ブース外側にある端末にQRコードや交通系ICカードをかざすと施錠される、という仕組みだ。料金は、キャンペーン期間中は15分150円、通常時は15分250円となっている。

同事業は、JR東日本 事業創造本部の中島悠輝などの若手社員が、本業の傍らコツコツと企画書を書き、社内提案したことが始まりだった。

中島たちは「働き方改革や生産性向上などの社会課題が叫ばれる中で、弊社でも何か貢献できるのではないか。また、弊社にとってもっとも重要な駅という空間をより良いものにしたい。その二点を考えた時、駅ナカでシェアオフィスを提供することで社会課題の解決につながるのではないか」とシェアオフィス事業発案の経緯について語った。

都心で働く多くの人たちにとって、移動の拠点となる駅で15分、特段やることもなく過ごすのではなく、ブースで仕事をすれば時間の有効活用につながり、ひいては生産性の向上につながるのではないか、と考えたのだ。

2018年6月に企画が採用されると、5カ月後の11月には東京駅などで実証実験が行われた。多くのお客さんに体験しもらいたいという思いから、一回の利用時間は15分または30分と上限を設けたが、予約が取れなくなるほど好評だった。

「駅で時間を持て余しているお客さん、たとえば電車の発車時刻まで20分あるといったお客さんに利用していただいた。そういったニーズがあることを実証実験で証明できた」と中島は手応えを口にした。


(左)JR東日本の中島悠輝 (右)JR東日本の本間淳介

都心部である東京駅、新宿駅は人の往来も多く、ビジネスの需要があると予測できるが、ではなぜ郊外である立川駅にも設置したのだろうか。

「立川では郊外でのニーズをチェックするため、今年5月から実証実験を始めました。こちらも予約が取れないほど多くのお客さんに利用していただきました。ただ、東京駅と比べると使われ方が違いました。立川駅には二名用のブースを設置したのですが、そこでは保険の商談やテーブルゲームをされるお客様もいて、都心とは違ったニーズがあることが見えました」(中島)

また駅ナカのカフェで仕事をする姿をよく見かけるが「最大の特徴は個室という点です。お客様の機密情報を取り扱う仕事の場合、不特定多数の人がいる場所で開いてはいけないという企業もあります。その点、個室なら誰からも覗かれず、セキュアな環境で働くことができる」と中島は語る。
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文=本多カツヒロ

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