「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス監督が設立したVFXスタジオ「Industrial light & Magic(ILM)」のバンクーバー支社で活躍する彼のストーリーを、本誌(8月24日発売)に先駆けてお届けする。
インタビュー前、身長187cmの堂々たる体躯でカメラの前に立つ田島光二は、28歳という年齢に似合わぬキャリアのなせる業か、悠然と構えていた。
ハリウッドで活躍するコンセプトアーティスト。日本では知られた職業ではないが、この世にまだないキャラクターや物、街などを映画監督のビジョンとコンセプトに基づきCGでデザインし、視覚化する仕事だ。
「ファンタスティック・ビースト」のサンダーバード、「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」のホローガスト、「ヴェノム」……これらのVFX(視覚効果)を使った大作で、スクリーンに出現した魔法動物やモンスター、地球外生命体といったものたちは、田島光二の左手によって生み出されたものだ。
バンクーバーILMオフィスの自席にて。左手でペンを握り、描いていく。周りにはキャラクターフィギュアも。
特にクリーチャー(モンスターや怪物など想像上の生物)を描くのが得意。昨年からは、世界のトップアーティストの集団であり、ジョージ・ルーカス監督が設立したVFXスタジオ、Industrial Light & Magic(ILM)のバンクーバー支社に籍を置く。
フラッシュを浴びる姿を見て、撮影を見学に来た同級生がつぶやく。
「彼がこうしているのが不思議です。出会ったころは、将来の夢もない普通の高校生でしたから」
撮影を終えた田島自身も、人懐っこい表情になってこう昔を振り返った。
「身長だけは周りに負けませんでしたね。僕、小6で170cmあったので」
身長「だけ」と強調するのには訳がある。本人曰く、18歳までは勉強もスポーツもぱっとせず。何をやっても不器用で、絵を描くのは好きだったものの、人目を引くほど上手ではなかった。本当にどこにでもいるような高校生だったのだ。
ではなぜ10年のうちに、田島は若手トップアーティストとして脚光を浴びる存在になり得たのか。
モンスターを描くのだけは好きだった
母はプロのイラストレーター、父も絵を描くのが趣味。2歳上の兄と6歳下の弟も含めて、一家全員絵を描くのが好きな環境で育った。お気に入りの遊びは「お題対決」。両親から「犬」「狼男」「花」といったテーマを出してもらい、3兄弟がそれについて描くというものだ。
「いまやっている仕事と一緒ですね。クライアントが家族から監督に変わっただけで」