彼は、日本を代表するビジョンや才能の持ち主30歳未満の30人を選出する「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のポリティクス部門を受賞した毛塚幹人だ。
東大法学部を出て、財務省に入省。国の中枢でエリート街道を走ってきた彼は、何を思い、地方行政を担う副市長に転身したのか。
他者と違う立場から科学の未来を守りたい
幼少期の夢は研究者だった毛塚。中学時代には科学部に入り、高校時代から地元の大学での公開授業を受講しに行くほどの科学少年だった。今でこそ「科学の街」であるつくば市の副市長として働いているが、大学卒業後に進んだ先は国の予算編成という国家の中枢に携わる仕事だ。
「将来の選択肢に思い悩む高校時代、科学系の国家予算が削られる話がニュースに出ていた時期でした。日本の研究費ランキングが下がるなか、周囲の研究者を目指す仲間達とは異なり、彼らを支える側から、科学に携わることに価値を感じました」
かくして行政の世界を志した毛塚。いざ、財務省の職員として国家の財布を管理する立場になると、見えてきたこともあった。
「財務省の仕事は『予算を作る、税制を作る』こと。国家の根幹をどう動かして行くか、に向き合う4年間で、大組織の下っ端からではありましたが、非常に良い修行をさせてもらいました。最後の年には、税制改正の国会対応を行うポジションになり、国家レベルで政策形成をしていくことのやりがいと難しさも感じていました。例えば、消費税の引き上げのタイミングを調整するのもそう。組織として時間を掛けながら取り組まなければならず、ある意味、根回しも大切な世界なのです」
転機が訪れたのは、税制改正まっただ中のこと。大学時代に師事していた当時の市議会議員で、現市長の五十嵐立青から「久しぶりにタッグを組もう」と電話口で告げられる。