現在3基の衛星を運用中のICEYEはカメラではなく、合成開口レーダー(SAR)を用いて画像を生成する。SARは、人工衛星や航空機にレーダーを搭載して飛行させることで、軌道を直径とする仮想の巨大レーダーを実現する技術だ。その画像は解像度が高く、自ら電波を照射して観測しているため、雲があっても撮影が可能だ。
ICEYEの衛星画像は、石油やガスなどの資源開発企業からハリケーンの被害の模様の把握など、広範囲な分野で利用可能だ。「1メートル以下の解像度の実現により、今後はさらに多様な分野での活用が可能になる」と同社の共同創業者で戦略主任のPekka Laurilaは話した。
衛星分野ではここ10年で小型化が進んできた。ICEYEの衛星は長さが約2.7メートルで重量は約68キログラム程度の小型衛星だ。大型の衛星は対地同期軌道から高解像度のイメージを取得可能だが、小型衛星は低軌道で迅速なオペレーションが可能で、地上の模様を大型衛星よりも高い頻度で撮影できる。
ICEYEの今回の発表は、小型衛星の画像の解像度が大型衛星に匹敵するレベルに近づいたことを示している。小型化により製造や打ち上げコストを抑えつつ、迅速なオペレーションが可能になり、市場を拡大する上でのメリットも大きい。
「小型衛星は市場の需要に迅速に対応することが可能で、必要な数を配備できる」とLaurilaは話した。
アメリカの宇宙シンクタンク「Bryce Space and Technology」によると、2018年に気象情報や船舶の行動を人工衛星から把握するリモートセンシング企業の売上の合計は、20億ドルを突破していた。
この分野への投資も活発化しており、ICEYEはこれまで累計で約5300万ドル(約56億円)を調達している。また、ヴァージニア州本拠の商用電波観測衛星を用いた地理空間情報の提供を行う企業、Hawkeye 360も先日、7000万ドルのシリーズB資金調達の実施を発表した。サンフランシスコ本拠のPlanetの企業価値は22億ドルに達し、累計で7億7000万ドル以上を調達している。
ICEYEは今後も新たな資金調達の機会を探る予定だが、Laurilaによると同社は既に強固な顧客基盤を築き、持続可能なビジネスモデルを構築しているという。先日は欧州宇宙機関(ESA)との提携をアナウンスした同社は、広範囲な領域の顧客を抱えている。
「衛星画像分野には確立された市場があり、今後の需要も高まっている」とLaurilaは続けた。