そのスタートアップとは、「SPACE ROASTERS(スペース・ロースターズ)」。2018年にオフィスを構えず創業された同社は、2020年にドバイの未来博物館(The Future Museum)内のカフェでコーヒーの提供を始めることを目標としている。
プロジェクトの全容はこうだ。
同社が特別開発した「スペース・ロースティング・カプセル(SRC)」というカプセル型容器に、300キロのコーヒー豆を搭載してロケットで打ち上げる。SRCは高度200キロでロケットから切り離され、大気圏に突入した時に生じる熱に、回転しながら焙煎される。
その理由について、同社は「豆に均等に熱が行き渡るから」と説明する。無重力で焙煎することで、コーヒー豆がロースターの熱い部分に触れることなく、360度均等に熱を当てて焙煎することが可能になるわけだ。
同社がひくマイルストーンによると、今年中には軌道上への打ち上げをおこなう予定。この結果から、コーヒー豆を無重力で焙煎することのメリットを影響をより詳しく把握できるという。
メンバーは現在3名。共同設立者兼CEOハテム・アルカフジはドバイに、共同設立者兼CTOアンドレ・キャバリーニはサンディエゴに、CCO(Chief Communication Officer)のケリー・サリバンはワシントンDCに拠点を置き、リモートワークでプロジェクトを進める。
CEOハテム・アルカフジの背後にあるのは、ドバイで建設中の「The Future Museum」
あえて言おう。たかがコーヒー豆の焙煎で、なぜここまでのことをするのだろうか。
きっと並々ならぬコーヒーへの情熱が彼らを突き動かしているのかと思いきや、大きな理由は別のところにあった。
「これまで宇宙空間は、政府や億万長者だけがアクセスできる空間だと思われてきました。私たちは、一般の人々にも宇宙の可能性を感じて欲しい思いからスペース・ロースターズを立ち上げました。誰にとっても身近な存在であり、さらに私たちが愛するコーヒーを通して、宇宙技術がいかに日常生活を向上させられるかを示したいと思います」(CCO ケリー・サリバン)
フランスの宇宙国際大学(International Space University)で出会ったアルカフジとキャバリーニは、宇宙空間を利用したテクノロジーで、一般の人々の生活をより豊かにすること、そして宇宙空間を人々にとってより身近なものにすることを目指しているのだ。
3月末には、キックスターターでクラウドファンディングをスタートする。宇宙空間で焙煎された豆を使った「スペースコーヒー」の気になる値段だが、残念ながら現在は非公開。1杯あたりの値段はクラウドファンディングでの資金調達後に明らかになる予定だそう。宇宙で焙煎されたコーヒー、一体どんな味がするのだろうか。