トゥーシンプル(TuSimple)の共同創業者であるシャオディ・ホウは、昨年、同社の自動運転大型トラックの走行テストのためにアリゾナ州のソノラ砂漠の一角に流通拠点を開設した。同社にとっては、7000億ドルとも言われるトラック輸送市場で自動運転システムを商用化するためのステップだった。
トゥーシンプルのトラックは、現在、セーフティドライバー1名とエンジニア1名が乗車した状態で運用されているが、ホウは来年から「ドライバー抜き」の走行を始めたい考えだ。
運転手不要のトラックの開発に力を入れているスタートアップは、トゥーシンプルだけではない。エンバーク・トラックス、アイク、スタースキー・ロボティクス、コディアック・ロボティクスは、どれもサンフランシスコのベイエリアを拠点とするスタートアップで、同じく独自の自動運転大型トラックを開発すべく競い合っている。
まさに群雄割拠の様相を呈する中、34歳のコンピュータ科学者であるホウは、1億7800万ドルの資金を調達しており、同社の評価額は11億ドルとなった。これにより、トゥーシンプルは自動運転トラック分野初のユニコーン企業となり、最も規模が近い競合スタートアップの3倍以上の軍資金を有することになった。
この大金のおかげで、トゥーシンプルは保有トラック台数の拡大において有利になる。保有台数の拡大は、アリゾナ州フェニックスに拠点を置く紙製品メーカーのロイヤル・ペーパーといった顧客とより多くの取引契約を結ぶ鍵となる。
もちろん、トゥーシンプルと競合するのはスタートアップだけではない。グーグルの親会社であるアルファベット傘下のウェイモは、昨年12月にフェニックスで自律走行型のタクシーサービスを開始しておりゼネラル・モーターズの自動運転部門であるクルーズやウーバーに先んじてこの市場に進出した。また、昨年は自動運転トラックのテストも開始。これには、同社で数百台ものミニバンの自動運転を成功させているセンサーやソフトウェアが用いられている。ウェイモがトラック輸送部門を強化したいと考えれば、潤沢な資金でもって瞬く間に競合全社の合計を超える台数のトラックを保有できるだろう。
しかし、ホウの自信は揺らがない。なぜなら、トゥーシンプルには「他のどの無人運転技術企業より長い、1キロ先まで見通す独自の視覚システム」と「ディープラーニングを用いた“自ら対応を考える”大型トラックの運転専用のソフトウェア」があるからだ。
乗用車より先に「トラック輸送」が来る
ホウが正しければ、トゥーシンプルは一足先に「自動運転ブーム」から利益を上げることになるだろう。