ビジネス

2019.08.12 10:00

ウェイモ、ウーバーに負けない!「自動運転トラック」初のユニコーン


現在、この分野では巨大テクノロジー企業やスタートアップ、自動車メーカー世界大手の数十社がひしめき合い、ウェイモに追いつこうとしている。しかし、各社の「乗用車の自動運転プログラム」の大半はいまだに実験段階にあり、持続可能な事業として成立するまでには少なくともあと5年かかる。それより、「自動運転のトラック輸送」のほうが先に商業的な成功を収めると予想できる。

なぜなら、トゥーシンプルが取り組んでいるのは交通量や人通りの多い都市部の街路ではなく、州間高速道路を走行するという比較的容易な課題であるからだ。同社の計画は、自動運転トラックを使って大都市郊外の物流拠点間で商品の長距離輸送を行い、そこから貨物をより小型の、人間が運転するトラックで地域に配送するというものだ。

トゥーシンプルの技術は、まだ完全には実用性が証明されていないが、それでも自動運転モードで物流拠点を出発するトラックの1台1台が、システムを賢くしてくれる。路上テストやビデオゲームのようなテストも、開発の速度を加速させる。「運転時に起こり得る問題を考えるのが私の特技になりつつあります」とホウは語るのだ。

北京出身のホウは、2008年に上海交通大学で学位を取得した後、カリフォルニア工科大学で脳が視覚情報を処理するメカニズムや人工知能について研究した。あまりにも開発途上の分野であったため、「まるで錬金術のようでした。みんな、どうやってこの技術を活用すればいいのか分かっていなかったんです」と振り返る。

そんな中、ホウは15年に突破口を見出す。ディープラーニングを使うことで、グーグルより迅速に無人運転システムを開発できるのではないかと考えたのだ。ホウは、グーグルによる開発の進展には敬意を表しながらも、複雑な都市環境は自動運転には難し過ぎると考えていた。だが、幹線道路となると話は別だ。

マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアパートナー、ベルント・ハイトも「幹線道路はコントロールされた環境であるため、自動運転技術を非常に適用しやすく、マッピングも簡単です」とトラック輸送業界のほうがよりスムーズな開発の道のりに直面していると、ホウに同意する。

もちろん、不安がないわけではない。アメリカにおいて、自動運転には州ごとに規制があるため、トゥーシンプルは東西の海岸を結ぶ輸送サービスを展開できずにいる。また、自動運転による死亡事故が再び発生すれば、トゥーシンプルの計画を進めることが困難になりかねない。

しかし、市場の需要と経済性は、無人運転の40トントラックを路上で走行させる不安に勝るかもしれない。トゥーシンプルの流通拠点は、州間高速道路を降りてすぐのところにあるが、この道路はロサンゼルス港と米国南西部、そして最終的にはフロリダまでを結ぶ極めて重要な貨物輸送路である。ホウはこの場所で、道の先には成功が待っていると信じている。


XIAODI HOU シャオディ・ホウ◎中国生まれ。カリフォルニア工科大学で脳が視覚情報を処理するメカニズムやディープラーニングについて研究。在学中にトゥーシンプルを構想し、2015年に友人のモー・チェンと共同で同社を創業。

文=アラン・オンズマン 写真=ムンシ・アハメド 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN 社会課題に挑む50の「切り札」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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