開催翌日に民主党の大統領選有力候補エリザベス・ウォーレン上院議員がGAFA解体論を披露すると、その翌日にはフェイスブックの初期投資家でマーク・ザッカーバーグのメンターであったロジャー・マクナミーが基調講演に立ち、ウォーレンの考えを支持して独占問題に警鐘を鳴らした。
また、「AIとIoT時代における倫理と責任」や「テクノロジーの世界に公民権は存在するか」などテクノロジーとプライバシーや倫理に関するセッションが10本近く企画されるなど、これまでのテクノロジー一辺倒からの潮目が変わり、イノベーションが引き起こす人間と社会への様々な影響を踏まえて、今後どう共存していくべきかという議論が盛んであった印象だ。
さらに注目を浴びたのは、最年少の女性NY市議で急進左派のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(29)だ。ミレニアル世代の代表格と目されるオカシオ=コルテスは国民皆保険、雇用保障と気候変動への取り組みを阻むものとして「資本主義は救いようがない」と発言し、全米で報道された。
1980年から2000年の間に生まれたミレニアル世代は、19年に初めて米国の成人以上で最多の人口となる。
Gallupによるとミレニアル世代の45%が資本主義に、51%が社会主義に対して良いイメージを持っている。特徴的なのは、資本主義へのイメージが8年間で68%から45%と急落している点である。背景には行き過ぎた自由主義経済への反動と急速に拡大する格差がある。
ジョージタウン大学の経済学者ケイト・ウォルドック(自身もミレニアルの中間世代)はシカゴ大学経営大学院教授のルイージ・ジンガレスとホストを務めるポッドキャスト「Capitalis’t」の中で、「若い世代が理想主義的なのは一般的」としながらも、9.11を青春期に目撃したこと、就職期にリーマン・ショックによる大不況を経験したこと、中道左派への失望、前世代に比べて学生ローンの総額が飛躍的に増えていることをその思想背景の特徴とし、ミレニアルの「社会主義」のイメージは本来の社会主義ではなく、「自身の考えをリベラルと呼ぶよりも『カッコいい』と思われて」おり、求めるのはヘルスケアや育児ケアの充実、また富裕層への課税を財源とした教育への資金援助政策で、むしろ北欧などの国が理想像である、という。