ビジネス

2019.08.02

「CEOアクティビズム」の牽引者は世界にどう働きかけるのか

(左から)ローズ・マーカリオ、マーク・ベニオフ、ティム・クック、


ティム・クック/アップル CEO

──企業の責務は、利益追求だけにあらず


中国の製造ラインで問題が起きている。そう報告を受けたアップルのティム・クックはCOO(最高執行責任者)時代、「誰かが現地で監督すべき」と語ると、30分後、担当者にこう告げた。

「君はなぜ、まだここにいるのかね?」

担当者は片道切符で中国へ飛んだという。

クックは2018年8月にアップルを、時価総額1兆ドルを超えた世界初の上場企業に導くなど、経営手腕への評価は高い。だがクックのCEO就任後、アップルが特に注目されている面がある。それは「ダイバーシティ(多様性)」への理解だ。

14年に自身がゲイであることを明かしたクックは、「性的少数者であることの難しさをよく理解しているつもりだ」と語っている。そして、同社はカリフォルニア州の同性婚合法化を支援する一方で、アリゾナ州の反LGBTQ法案に対しては反対の声を上げるなどの活動をしてきた。

企業の責務は利益を出すことだけではない。クックの姿勢に次世代企業のあり方が見える。

ローズ・マーカリオ パタゴニア CEO
──企業の「人格」を世界に表明


“The President Stole Your Land.”(大統領はあなたの土地を盗んだ)

これは2017年12月、パタゴニアの公式サイト上で発表された「宣戦布告文」。トランプ政権が発表した環境保護地域縮小政策の違法性を訴えるメッセージだ。

毎年11月第4金曜日、各ブランドが叩き売りを行うブラックフライデーでは一切の値引きをせず、逆に「必要ないなら買わないで」と題したキャンペーンも打つ。

パタゴニアが、国や世の中の風潮に対して明確に「NO」を突きつける一連の出来事の後、同社の決算では大幅な売上高アップを記録。ローズ・マーカリオの発言と行動に共感した顧客が増え、SNSでは同社商品の購買を促す投稿が増えている。

今年設立30周年を迎えたパタゴニア日本支社で発表されたキャンペーンに添えられたコピーは「言葉よりも行動を」。ローズを起点とした「企業の意志」は世界に広がり、人々の意識醸成、そして今後さらなる行動の波を起こしていくことだろう。

文=フォーブス ジャパン編集部 イラストレーション=アレクサンダー・サヴィッチ

この記事は 「Forbes JAPAN 社会課題に挑む50の「切り札」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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