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大日本印刷 専務執行役員 山口正登

印刷を生業にしていた「大日本印刷」は、デザインの力で新たなビジネスを切り開こうとしている。

毎年4月にイタリア・ミラノで開催される世界最大規模のデザインの祭典「ミラノデザインウィーク」で、専務執行役員の山口正登に話を聞いた。



どれだけ品質に優れた商品であっても、それだけで売れる時代ではない。“デザイン”の力で付加価値を加える傾向は、ますます強まっている。しかしこれは一般消費財を主とするBtoC企業の考え方だろう。ところが「大日本印刷」(以下DNP)は、BtoBを中心とする企業でありながら、デザインの力を理解している。

「弊社は今年で創業143年目を迎え、現在を“第三の創業”と位置付けました。戦前はまずは出版関連の印刷業で会社の礎を築き、戦後はそこに加えてパッケージや建材などの事業も拡大。つまりは多角化を進めました。しかしこれからは、もっと革新的に事業を変えていく必要がある。生活者の視点でニーズを読み解き、“機能+デザイン”でビジネスを広げていく必要があるのです」と、DNPの専務執行役員である山口正登は語る。

世界最大規模の印刷会社であるDNPでは、長年培ってきた印刷技術を駆使して、住宅建材や自動車や鉄道などの移動体向けの内装材といったビジネスも拡大させている。実は刷り上がった製品の裏側には、データ処理やソフトウェアといったノウハウが隠れている。これをどう生かすかが、今後のビジネスの中心となる。印刷という平面から立体的な空間構成へと、可能性を広げていくのだ。

では今のDNPは、何ができるのか? それを知らしめる場所として選んだのが、ミラノデザインウィークだった。

「我々のことを世界中のクリエイターに知ってもらうのに、これほど適した場所はありません。ただ商品を並べても意味はない。ここは“我々の発想”を見てもらう場所であり、世界中の優れたクリエイターに可能性を感じてもらい、関係性を築き、次なるステップアップにつなげる場所なのです」



インスタレーションのテーマは「Patterns as Time」。ここには、人の感情に残る“パターン”を、印刷技術を通じて継承していきたいというメッセージをこめた。

展示の右半分は「Patterns of Nature」。自然界に存在するパターンの中に電子ペーパーを組み込んだ椅子を置き、周囲に溶け込んだり現れたりを繰り返すという不思議な空間になっている。そして左半分は「Time Printing」。これはDNPがライセンス管理をしている伝統的な江戸小紋や現代風にアレンジした伝統柄の文様などをアクリルに加工したもの。いずれの作品も、新しいサーフェスデザインであり、創造性を掻き立てる技術として、世界へとメッセージを送るのだ。

「こういった試みが、今後のビジネスに、どのように影響を与えるのかはまだわかりません。しかし第三の創業を迎えた今だからこそ、DNPの姿勢、デザインへの考え方、伝統の継承と革新的技術を、どんどん世界に発信していくべきなのです」

多くの来場者は、その迫力に驚き、楽しそうに写真を撮る。この感動体験が、新たなビジネスの可能性につながっていく。

photographs by Mitsuya T-Max Sada edit & text by Tetsuo Shinoda

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