各国の企業に品質管理・サプライチェーンの監査プログラムを提供する香港のQIMAが先ごろ発表した調査結果によると、年初以降に中国以外からの調達を開始、または近く開始する予定の企業は、米国企業の80%、欧州連合(EU)加盟国を拠点とする企業の67%となっている。
中国製品を対象とした関税の引き上げを行っていないEUの企業は、米国企業ほど貿易戦争の影響を受けていない。だが、QIMAによればEU企業は別の理由で、中国の製造業への依存度を引き下げようとしている。
QIMAが四半期ごとに公表するこの調査結果は、製品検査と監査を通じて各国の消費財メーカー150社以上から収集したデータと、アンケート調査に基づくものだ。最新の調査では、米国企業の75%以上が「関税引き上げの影響を受けている」と答えた。最も深刻な問題の一つはコストの上昇で、その対応策として、調達先の変更を当初の計画より前倒しで進めているという。
一方、EU企業にも同様の傾向が見られる。関税を理由に中国からの調達を減らしたと回答した企業は14%だが、競合する米国企業が調達先を変えていることに加え、自らも関税引き上げの影響を受けることへの警戒感が、サプライチェーンの見直しを促している。
一部はすでに中国以外からの調達を開始している。そのうちの大半が、南アジアからの調達に切り替えたと見られる。同地域でのQIMAに対する製品検査と監査の依頼は今年上半期、前年同期に比べて34%増加した。つまり、この地域に工場が増えたということだ。
また、調達先を自国に近い国に変えた企業もある。トルコとアフリカの一部の国では上半期、検査と監査の需要が前年比40%以上の増加となった。特にEUの生地・アパレルメーカーは年初以降、ルーマニアとポルトガルからの調達を増やしているという。
「脱・中国」が難しい企業も
中国の製造業に頼ってきた各社にとって、同国を切り離すことは容易ではない。多くが20年以上にわたって中国のパートナーと事業を行ってきたということだけではなく、中国企業は手掛ける製品の品質を大幅に向上させてきた。
米国のビーチリゾートにあるサーフショップで販売されているビーチチェアは、価格が10ドルでも80ドルでも、大半が中国製だ。そして、80ドルの製品をパキスタンで作ることはできない。一部の国には、中国に代わってバリューチェーンを支えるだけのテクノロジーやスキルセットがないのだ。
QIMAのアナリストによれば、特に南アジアでは今年に入り、製品の品質の低下が見られるという。製品検査での不合格率は、インドとパキスタンでそれぞれ33%、37%を超えている。その他、カンボジアで今年の第2四半期に行われた製品検査では、全商品の40%以上が不合格とされた。
これらの地域のサプライヤーは、需要の増加への対応に苦労している。適切な品質管理プロセスを確立したり、新たに雇用した労働者の研修を行ったりするための時間も必要なリソースないまま、中国に代わって新製品を生産したり、生産量を引き上げたりしている。
EU市場向けの製品については、中国に代わる生産拠点の候補としては、域内企業に近い国の方が有利だということかもしれない。トルコでは今年上半期、製品検査での不合格率は25%以下となっている。