アフターデジタル時代におけるリテールのあり方とは
2019年5月には丸井グループとの資本業務提携を発表し、7月現在、東京、神奈川、大阪、神戸に計12店舗を構えるなど、実店舗の展開を広げるFABRIC TOKYOだが、そこには丸井グループとの“蜜月関係”がうかがえる。
丸井グループは2015年3月期以降、入居店舗の売上歩合で賃料が決まる「百貨店型」事業モデルから、定期借家契約で一定の賃料を得る「SC(ショッピングセンター)型」事業モデルへの転換を図っている。2019年3月期に完全移行を果たした後、店舗戦略に掲げているのが「デジタル・ネイティブ・ストア」構想だ。「アフターデジタル時代」を見据え、D2Cブランドやサブスクリプションサービスなどの出店を推進し、店頭販売にこだわらない「体験型ストア」を実現しようとしている。
FABRIC TOKYOは、2016年に新宿と池袋のマルイに出店したことを実店舗展開の足がかりに、結果的に坪単価売上にして国内最大級の実績を挙げた。
「当社はデジタルで顧客との接点を持つため、丸井にとっては普段接点のなかったお客様を集客できますし、場の価値を高めるような要素となる。当社にとっては、マルイという認知の高い場所へ出店することでブランド認知も高められますし、丸井グループの金融サービスとの連携も可能となる。そういったシナジーがあることが今回、提携に至る大きな要因だったのです」
デジタルがリアルの世界を取り込み、オンラインとオフラインがよりシームレスになっていくなか、これからのリテール企業はいかにOMOへシフトできるかが、今後生き残っていくうえで重要なカギとなるだろう。
森はこう語る。
「これだけOMOが隆盛してきているのは、ある意味、あまりに情報が氾濫して、“オンラインが混み合ってきている”からではないかと考えています。もはやオンラインだけでブランド価値を高めることが困難になってきている。アップルやテスラにファンが多いのは、やはり実店舗でリアルな価値を実感できるからこそでしょう」
今後も目指すのは、日本発世界に認められるようなブランド。オンラインでデータを蓄積しながら、オフラインでそれを顧客体験として実感できるような場を提供することで、ファンを増やしたいという。