韓国軍、幹部選抜に「AI面接」システムを導入

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世界各国の軍隊の“AI化”が進むなか、韓国陸軍では所属幹部を選抜するHR過程にも人工知能(AI)を取り入れていくと発表している。約60分にわたり行われるこのAI面接は、志願者がウェブカメラとマイクを装着して行う。

まず、PC上で顔の登録を行った後、基本的な質問への応答、自己紹介、長所・短所の自己申告などオリエンテーションを行う。その後、志願者には分野別に設計された5つほどの専用ゲームが課せられ、最後に性向や特徴を把握するためいくつかの質問が投げかけられる。その際の総合的な分析結果が、該当部署・部隊に自動的に提供されるというフローである。

韓国陸軍はAI面接システムの最大のメリットとして、空間・時間的制限からの解放を挙げている。インターネットさえあれば、いつ、どこでも面接を行うことができるからだ。また面接時に、志願者の表情、音声、話す際に使われる単語、心拍など言語・非言語の幅広い分析要素をベースに、客観的かつ細分化された評価をくだせることもメリットのひとつとして指摘している。

韓国陸軍は昨年から、AI面接制度の導入に先立ち、すでにAIを面接に取り入れている民間企業・機関を訪問し成果をヒアリング。選抜業務担当者と部隊兵士約400人を対象に、テスト評価も実施し精度を検証してきたという。

今後、在職している軍従事者に対してもAI面接を実施し、優秀な人材のパターンや、各部隊に適した対象者の「ペルソナ」を抽出していく方針も明かしている。より長期的には、AIとビッグデータをベースに、人材選抜および管理、就業支援を包括するスマート人材管理システムにまで昇華させていくのが計画の大筋だ。

「AI参謀」も開発へ

2020年にはAIの正確性を高めるために注力し、2021年頃から約2万人の初任幹部および長期服役者にまで対象を拡大。2022年には幹部選抜過程に全面的に導入し、2025年からは海外派兵対象者や武官などそのほかの軍内の人事選抜過程にもAI面接システムを活用していくとしている。

韓国・国防部は2025年までに「AI指揮決心支援システム」を開発するとも明かしている。これは、作戦指揮官の軍事作戦中の適切な判断をサポートするもので、いわゆる“AI参謀”とも表現すべきシステムである。敵国部隊の兵力、装備の数量、位置、予想される侵入経路、自国陸・海・空軍の総合火力の詳細情報や、気象情報などのデータがAIの判断に使用される。なお軍事作戦中の判断は兵士や民間人の身の安全や命に係わるもので、実際のところ、どのレベルまで投入されるかは明らかにされていない。

今後、世界各国の軍隊では、兵器だけでなく、作戦の判断や人材の登用など幅広い用途でAIが使われていくのかもしれない。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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